血管の谷間を狙って砥石を当てている。血管を削らないように、そーっと、慎重に。
子供のぷっくらした手が彫れれば、ゴツゴツした手だって彫れるのだ。ただやってみようとしなかっただけで、やってみたら意外と簡単だった。
自分の腕をときどき眺めながら彫ったのだけれど、右手と左手は同じじゃないのね。静脈の通り道は川のように流れやすい場所を選んで骨の尾根を何度も超えながら、指先へ向かっている。
リンゴの枝の途中から唐突に若葉が出て来るのもそうだ。木の中に水の流れがあるからだ。川の傍には緑が茂る、木の中の川だ。
もうすぐ、ガハクの足の浮腫みが消える。そしたら、血管がしっかり浮き上がって来るだろう。ガハクは採血する度に「ずいぶんしっかりした血管ですねえ」と褒められるそうだから、体の中の川が滔々と音を立てて流れているということだ。(K)
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