2021年9月18日土曜日

ゴッホの友達

ガハクが不思議な絵を描いている。この絵は7年前に法然院に持って行って並べた中の一枚だ。あの時は蓮の葉の中央に女の人が眠っている顔が描かれていたのだったが、大きく変わった。「ゴッホが見たら笑うよ」と言ったら、「笑ってくれるかなあ。嬉しいなあ。昨日は一日中これ描いてたんだよ」とガハクも笑う。

今朝は自転車で使った筋肉があちこち張っているそうだ。痒い所にムヒを塗っている。筋肉は鍛えられて太くなって来ると、皮膚とズレが生じるらしく、湿疹が出て痒くなる。それもしばらくすると治まって、いよいよ強くなる。落ちるのは三日、付くのにはひと月もかかるのが筋肉だ。

私の足の爪に境界線があるのに気が付いた。くっきりと段差になっている。それがだんだん押し上げられて、あともう少しで、たぶん2回爪切りするとすっかり新しくなる。『新しい人よ目覚めよ』と呼ぶ声が聞こえる。(K)


 

2021年9月12日日曜日

蛮人の信仰

メルヴィルの『白鯨』を読み始めたガハクを追いかけるように、私も毎晩読んでいる。クジラの肉を子供の頃はよく食べたし、馬の肉もよく食卓に出て来たけれど、どっちの動物も大きく逞しく美しい。 人間よりずっと素直で優れているかもしれないのに、皆で好きなように扱って来た。小さなものが如何に大きなものや優れたものたちを支配するか、その方法を考え出したのが人間だ。

人間の一番悪いところは嫉妬心だ。自分より優れたものを見たら、惚れ惚れと見上げて愛するのが最初の情動だったはずなのに、いつどこで捻じ曲げてしまったのか?闘争となじり合いばかりに明け暮れている間に終わってしまう寂しい人々のなんと多いことか。

ガハクの馬が突然素敵になっていて驚いていると、「もうどうでもよくなったんだよ。勝手に描くことにしたんだ」と言う。詩人は本なんて出さないんだよ、展覧会なんかしないのが絵描きなんだと言うガハクは、世を捨てて海に出た。(K)



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