9時間も寝たのに、ガハクはまだ眠そうに起きて来て、さっきまで見ていた夢の話をしてくれた。
(ガハクの夢:睡眠を分けてあげなきゃ死んでしまいそうな人がいたんだよ。そこでは睡眠は皆と共有されていて総量が決まっている。睡眠の配分を考えているうちに鼻水が出て来た。紙で拭おうとしたけど出て来ないので、啜ってみたら苦くて嫌な味がした。ここで目が覚めて、実際に洗面所で鼻を擤もうとしたけど、やっぱり何も出て来なかった。何なんだろうね?)
布団を畳もうとしら、枕元が汚れていた。 これがガハクの夢の正体かと思った。汚れたシーツをつまみ洗いして庭に干した。きっと昨夜たくさん食べ過ぎて、体重も50キロに迫る勢いだったから、胃液が出たのだろう。そんな色をしていたもの。
夢の中に出て来たという同室の人々はガハクの中の肉体と意識が分離して眺められたもののように思える。自分と思っているその自分はもう一人の自分を知らない。『自分』の部屋の中には他にも何人かいたらしい。入院中の病室の体験もあるのだろう。ずっと黙って耐えて来た人。疲れても眠ることもできず、ずいぶん消耗してしまっている人。やっと気がついてもらえた人が本当に救われるのは、安らかな眠りをたっぷりと与えられて迎えた朝だ。
今朝はライラックが咲いた。この花はとてもいい匂いがするんだ。根っこのあちこちから新しい株が出て来るので、株分けして庭のあちこちに植えた。ライラックの庭になりつつある。(K)