2020年4月11日土曜日

ガハクついに50Kg

CTを撮ったら右肺の下方に小さな突起が見つかった。重症肺炎の傷痕のようだけど、断言はできない。様子を見る為にまだあとひと月ステロイドを飲んで様子を見ることになった。ガハクはがっかりしたようだけど、私は積極的に先生に質問してみた。ICUではガハクの肺炎の原因は癌ではないと言われたのだけれど、と。

先生はガハクのICUでの治療データを眺めながら、「癌については調べてありませんね」とのこと。結局私の疑心暗鬼に応える形で、先生は再度採血を指示(さっきやったばかりなのに)。癌の兆候があるかどうかについて調べる血液検査だ。結果を聞く為に、来週また診察を受けることになった。

今日も病院の廊下をベッドに寝かされた人が運ばれて行くのを見た。ガハクはあの状態から今の姿まで戻って来たんだ。あの奇跡を忘れないようにしよう。生きているというのは、勇気と希望に包まれている状態だ。

今夜ついにガハクの体重が50Kgまで回復した。昼の鉄火丼と、夜のピザトーストのおかげで♪(K)


2020年4月10日金曜日

春の菜園

春の日差しに風が少し冷たかった。ネットで囲った菜園に入って2時間遊んだ。ふんわり地面を覆っている草を抜き、ドラム缶に野菜屑を放り込んで作った堆肥を入れ、ポットで育てたキュウリの苗を定植。春菊とサヤインゲンとゴボウの種も蒔いた。

去年は幾度もの猿の襲撃で球根が半数になったカサブランカだが、今年はネットの中に移植してあるから大丈夫。立派な芽が並んでいるのを確認した。

アトリエの畑にはカボチャを植え付けた。彫刻は夕方の1時間しかやれなかったけれど、やりたい事をやり終わってすっかりいい気持ち。

日が落ちると急に寒くなるのが山里だ。灯油ストーブにしようかちょっと迷ったが、薪ストーブにした。煙の抜けも良くて、パッと火が付いてスッと部屋が温まる。全てがうまく行った1日だった。(K)


2020年4月9日木曜日

額の皺

額にニュアンスが欲しくなって皺を刻んでみた。初めてのことだ。粘土でなら簡単だけど、石に刻むとなると難しい。一本の線が現れただけで、周辺の面が大騒ぎする。削っては磨き、磨いては鋭い線を刻み直し、荒砥で撫でてみたり、、、。いろいろやっていたら面白い技法に気が付いた。

ミケランジェロのような人はもういないが、彼の手の中に住んでいた善き霊なら親しく知っている。今日は勇気を出して彫り始めたら、ずっと傍にいてくれたようだ。(K)


2020年4月8日水曜日

睡眠を分けてやる

9時間も寝たのに、ガハクはまだ眠そうに起きて来て、さっきまで見ていた夢の話をしてくれた。

(ガハクの夢:睡眠を分けてあげなきゃ死んでしまいそうな人がいたんだよ。そこでは睡眠は皆と共有されていて総量が決まっている。睡眠の配分を考えているうちに鼻水が出て来た。紙で拭おうとしたけど出て来ないので、啜ってみたら苦くて嫌な味がした。ここで目が覚めて、実際に洗面所で鼻を擤もうとしたけど、やっぱり何も出て来なかった。何なんだろうね?)

布団を畳もうとしら、枕元が汚れていた。 これがガハクの夢の正体かと思った。汚れたシーツをつまみ洗いして庭に干した。きっと昨夜たくさん食べ過ぎて、体重も50キロに迫る勢いだったから、胃液が出たのだろう。そんな色をしていたもの。

夢の中に出て来たという同室の人々はガハクの中の肉体と意識が分離して眺められたもののように思える。自分と思っているその自分はもう一人の自分を知らない。『自分』の部屋の中には他にも何人かいたらしい。入院中の病室の体験もあるのだろう。ずっと黙って耐えて来た人。疲れても眠ることもできず、ずいぶん消耗してしまっている人。やっと気がついてもらえた人が本当に救われるのは、安らかな眠りをたっぷりと与えられて迎えた朝だ。

今朝はライラックが咲いた。この花はとてもいい匂いがするんだ。根っこのあちこちから新しい株が出て来るので、株分けして庭のあちこちに植えた。ライラックの庭になりつつある。(K)


2020年4月7日火曜日

ガハクの散歩

ガハクは今週から散歩に出るようになった。広場の枝垂れ桜がとても綺麗に咲いているという。植樹されてもう10年くらい経つかな?国道を走る車が、さらに減った。ハイキングの人も通らない。静かな山里だ。ホーホケキョと鶯の声がよく響いている。

ガハクが入院していた41日間はほとんど人と話すことなく独りで過ごした。石を彫ることを知らなかったら、寂しさに息が詰まっただろう。

ガハクが帰って来てから今日で24日目、またふたりで話しているだけの生活が始まった。でも前とは違う。どうでもいいことと、大切なこととの境界が明確になった。(K)


2020年4月6日月曜日

目が出来れば

磨いていたらだんだんつるんとしたつまらない顔になりそうに思えた。こういう時はいい考えが浮かぶまで放っておいた方がいいのだけれど、このところ畑ばかりやっていたので、また畑に逃げたくはなかった。で、しばらくじっと彫刻の目を見つめていたら、アイデアが浮かんだ。

磨くことによって消えてしまった起伏に、またヤスリでえぐって削り込む。すると、面に動きが出て目の周りが活発になった。瞳孔の暗がりの中の光が、微妙に変化した。尖った道具の先で瞳に陰影を刻む。仕上げては彫り、彫っては仕上げる。

知らない場所、見たことのない物、新しい出来事を前しして、決して怖気付かないようにしよう。煩悩はいつも後戻りさせようとするものだ。だけど今日はとても疲れていたので、却って前に進めた。(K)


2020年4月5日日曜日

靴修理

今朝ガハクは、私の靴を修理してくれた。剥がれた面にゴム用接着剤を擦り込んで、少し乾いてから、押さえ込んで叩くんだ。サンダルなんかも上手に直してくれる。

ガハクは子供の頃、靴の修理のお使いに行かされたそうだ。浜松駅前の路上には、いつも10人くらいの靴磨きが並んでいて、どの人に頼んだらいいか父親から聞かされていたし、その顔もしっかり覚えていたのでまっすぐ進んで「この靴直して」と手渡したと。寡黙な職人の手元を見ているのが面白くて、接着剤を2度塗りするのもその時覚えたことなのだそうだ。「上手でね、金槌でトントン叩いて、最後に綺麗に磨きあげるんだよ」見て聞いて決して忘れず。

『骨董屋』の中に出て来るあの倹しく優しい人たちを書いたディケンズ自身も、12歳で靴墨工場に働きに出たと、ついさっき知った。

アトリエの畑でネットを張り直してしていたら、散歩のおじさんが破れを繕うのを手伝ってくれた。そこに隣のお爺さんが出て来て、「ガハクさんご病気だそうですね、大丈夫ですか?」と声をかけられた。はい、コロナじゃなかったけれど、死にそうなところから奇跡的に生還して、今リハビリ中でやっと散歩が出来るようになりましたと答えた。驟雨が去ってひんやりした陽だまりが気持ちよかった。(K)


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