2019年10月26日土曜日

剣の翼

台風の影響の雨が朝から降り続いていた。午後もだいぶ遅くなって小止みになったのでアトリエに出かけようとして玄関のドアを開けた途端、ふと、さっき眺めた町田康botの一節が浮かんだ。

「あなたは怠けることを怠けたくなり、猛然と勉強を始めることでしょう。とにかく今は努力して怠けることが肝要かと存じます。」『人生を救え!』(町田康)より

この人の本は数冊読んだ。CDも一枚買ってずっとそればかり聴いていた時期もある。ピンクフロイドと町田康はうちではすごくウケたことがあったんだ。 純粋が突撃して行く感じ。音楽に感情よりも知性を感じたのは初めてだった。

出かけるのを止めて部屋に戻って、ガハクにギターを持ってくるように頼んだら、素直に反応してくれた。久しぶりにに合奏が始まった。合わないところは相変わらず合わなかったが、ガハクが「そのうちに合うようになるよ」と言ってしばらくしたら、合うようになったから不思議だ。怠けることをするのが善いことだと理解した今日は素晴らしい日だった。

少年の翼は剣のように鋭く空気を切って飛ぶ。(K)


2019年10月25日金曜日

天井画

強い筆圧をかけると壁にもたせかけているだけなので絵がバタバタとあおられて仕事がしづらい。それが嫌なので解決策はないかといつも思案しているがいい知恵が浮かばない。高くして天井に押し付けたらどうだろうと高い台に載せてみた。確かにバタバタしなくなったが上部を描く時に手ごろな踏み台がなく手を高く上げねばならないのが非常に辛い。だから又低い位置に戻した。
それにしてもミケランジェロのシスティナ天井画。凄いよな。上を向きながらしかもフレスコという時間に制約のある制作法でよくもあれだけの規模の絵を描けたな。こんな絵の数十倍?数百倍?の仕事量だぜ。超人的な体力気力…
まあ彼は天才だし若かったし教皇の注文だし…。ガハクは凡才だし年寄りだし天皇からの注文でもないしw
練った絵具がなくなる迄仕事して今日はおしまい。(画)

2019年10月24日木曜日

大きな翼

背中の空間と奥行きを出す為にひたすら彫っていたからか、それともサンドイッチを食べたからか、急に眠くなった。いつもならソファで寝ちゃうのだけど、今日は時間が勿体ない気がして気晴らしに畑に入った。白菜の外側の葉っぱをめくると、案の定マイマイがいた。手のひらの面にだけゴムが引いてある軍手をはめると、殻が付いた虫を潰すときに指の腹が傷つくことがない。気持ち悪いとか可哀想という気持ちは、もう無くなった。逞しくなったのだ。ボロボロに虫に喰われた白菜を毎年残念な想いで収穫して来て、やっとたどり着いた心情なんだ。泣きべそと甘ったれが変身すると、こうなる。小さく優しく可愛らしい子に大きな翼を彫ってやろう。(K)


2019年10月23日水曜日

ゴチャゴチャ描くのが吉

絵の上の方を緑色で塗ると森だと思われる。下の方をオレンジ色で塗れば地面と思うだろう。オレンジ色の上に馬の形を別の色で描けば地面の上に馬がいると見えるだろう。その馬を除けて白を塗ればそこは壁にも見える。不思議だと思わないか?全部ただの絵具でしかないのに。
ただ馬の色を変えねばならないと思った。それに少し面白くない。色だけでなく形、位置がピンとこない。さらにゴチャゴチャやり続けないといけない。(画)



2019年10月22日火曜日

ハッキリとものを言う線

白い大理石の上のぼんやりとした起伏は、磨いてしまうとほとんど見えなくなる。形を際立たせるには陰影の変化だけでなく、変化する形の境界線をハッキリ引かなければならない。でも境界線はいつも動き続けていて、なかなか線が決まらない。生きて泳ぐ魚を手で掴もうとしているみたいだ。蝶の羽のようなのが良いなと思ったのも束の間、だんだん鳥の翼になって来た。優しい意識の連続がハッキリとものを言う線を引く。(K)


2019年10月21日月曜日

どうでもいい事

人物群はほぼできあがりそうだ。でも彼らが「完成」するには周辺の情景がぴったりと仕上がって来ないとダメだろう。しかしなんだかとんでもなく遠い道のりのような気がする。でも意外とそうでもないようにも思う。突然できあがったりするし。まあどっちでもいいや。やれるまでやり続けるだけだから。
マイノリティーでもマジョリティーでもない人々という話を読んだ。マイノリティーの問題はすぐに見えてくるしマジョリティーは放っておいていい。でも多くはそのどちらでもない人たちだと。そして彼らの感じる今の社会の生き辛さに多くの問題があると。ある人は街の兄ちゃんや姉ちゃんが住み易い世の中はいい世の中だと書いていた。
やってもやらなくてもどっちでもいいように思える事。いてもいなくてもどっちでもいいように見える人。そんな中に我々の多くはいるのだという事を忘れないようにしよう。そしてやらなくてもいい事に身を捧げたりもする。それは必ずしも悪い事ではないと。(画)


2019年10月20日日曜日

羽化

翼がどうしても物質的で説明的なってしまうのを一気に変えた。軽く薄くした。透き通った羽のように見えるだろうか?こういう風に思い切ってやれるようになったのは、トワンが死んだからだ。理屈より情感を先行させても大丈夫になった。花に立つ内なる人は今夜羽化したようだ。(K)


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