家や森自体がオレンジ色に発光した今日の夕焼けのことをガハクが興奮気味に話してくれた。それはまさにトワン色だったそうだ。昨夜「トワンのいない生活が来るなんて思ってもいなかった。頭では分かっていたつもりだったけど」と、しみじみ二人で話していたのだったが、こういう見たこともない光景が現出すると意識が覚醒して爽やかになる。新しい理解が降りてくる。
今日は久しぶりに気持ちが騒つかずに落ち着いて石が彫れた。外灯を点けようと外に出たら、大きな翼のような雲が空一面を覆っていた。西の空に少しだけ青い空間があったから、あそこから太陽光が射し込んだんだな!(K)
2018年11月10日土曜日
2018年11月9日金曜日
存在のステージ
「死」とは何か、その答えなど到底僕などにはすぐに分かるものではないだろう。
しかし彼のことなら…今まで見たり触れたり聞こえるものとして一緒の時間を過ごして来た。あの日を境にそれがそういうものではなくなった。見ることも触れることも聞くこともできなくなった。存在しなくなった?
存在とは何だろう?
確かに肉体は消失した。今更墓を掘り返してもそこに彼はいない。しかし僕らの想念の中にあるイメージ、それは確かに存在を続けている。その固有性は依然として続いている。
今まで彼は肉体を共にして我らと同じ時間の中にいた。これからの時間は肉体なく存在すると考えた。それが彼のステージになったのだ。それを受け止めて共に時間を進んで行かねばならない。(画)
しかし彼のことなら…今まで見たり触れたり聞こえるものとして一緒の時間を過ごして来た。あの日を境にそれがそういうものではなくなった。見ることも触れることも聞くこともできなくなった。存在しなくなった?
存在とは何だろう?
確かに肉体は消失した。今更墓を掘り返してもそこに彼はいない。しかし僕らの想念の中にあるイメージ、それは確かに存在を続けている。その固有性は依然として続いている。
今まで彼は肉体を共にして我らと同じ時間の中にいた。これからの時間は肉体なく存在すると考えた。それが彼のステージになったのだ。それを受け止めて共に時間を進んで行かねばならない。(画)
2018年11月8日木曜日
光る森に包まれて
古代ギリシアの壁面レリーフを思い出しながら彫っている。石の端を額縁のように残し、ぎりぎりまで風景を広げている。曖昧な線を消し、ぼんやりした形に優しい陰影を与えたら、レリーフの中に刻まれた者たちが互いに関連を持つようになった。形が引き締まって来ると美しいものが湧き上がって来るのだ。さあ、いよいよ本当の世界に踏み込めるぞ!と思うと、煩悩が足掻いて抵抗する。寂しかったりするのはそのせいだ。そのメカニズムも少し分かって来た。(K)
2018年11月7日水曜日
四泊五日で帰って来た
トワンが帰って来た。イノシシを追って消えた雪の日。消息を絶ってから四泊五日で帰って来たトワン。あの時と同じ日数がかかった。今トワンはそこにいる。
なぜなら絵も彫刻も滞ることなく続けていられるではないか。彼の目を借り心を借りているおかげで今までやり続けて来れたのだから、本当にいなくなったのならできなくなっているはずだ。
さあ不在を嘆くよりも実在を感じよう。
新しい絵を描いた。これからはもっと思い切ってやっていく。(画)
なぜなら絵も彫刻も滞ることなく続けていられるではないか。彼の目を借り心を借りているおかげで今までやり続けて来れたのだから、本当にいなくなったのならできなくなっているはずだ。
さあ不在を嘆くよりも実在を感じよう。
新しい絵を描いた。これからはもっと思い切ってやっていく。(画)
2018年11月6日火曜日
大天使飛来
鳥の長かった首を短くしたら、人のようになった。山の上に広がる雲を見ていて巨大な鳥のようだと思った最初のイメージは、これだったと今分かった。いつもそうだけど、彫りながら気が付くことばかりだ。ダイレクトに彫れることの方が少ない。雲が鳥になり、鳥が人になり、人は大きな翼を持つ天使になった。幼くして死んだ者は天使の教育を受けると聞いている。みんな素直だから大抵の子が天使学校を卒業できるのだそうだけど、大人はそうは行かない。夫々の性質に従った場所に収まっていくのだそうだ。だからこの世で良い人になっておかなきゃ死んでからじゃ間に合わない。ところがトワンという犬は、最初から天使が犬の姿をしてこの世にやって来た。今日は香典までいただいた。どんなに皆を和ませていたことか。こんどは大きな翼を持って飛んで来ておくれ!(K)
2018年11月5日月曜日
2016
この絵の裏に2016とマジックインクの記述がある。少し驚いた。もっと古いものだと思っていたからだ。いや描きだしは多分もっと前だったろう。その図柄を覚えている。人物は麦わら帽を被っていてずっと小さい姿だったし家の足元にはバラの生垣も描かれていた。全体にかなり未消化な内容だったのでそこに修正を加え、描き終えた年がその数字に違いない。前住んでいた家の庭から移したリンゴの木がやっと根付きそれらしい立派な実をいくつもつけたのが誇らしくて描き始めた絵のはずだ。
トワンはこの時既に12歳だったんだな。彼の表情と質感が気に入ったので終わりにしたのだった。(画)
トワンはこの時既に12歳だったんだな。彼の表情と質感が気に入ったので終わりにしたのだった。(画)
2018年11月4日日曜日
月へ向かう道
寂しさを堪えて石を彫り続けていたら、ふとあの夜の星空が浮かんで来た。エンジンをかけずに、しばらくふたりと1匹で眺めていたっけ。喜びで胸がいっぱいだった、星が眩しかった。生きてまた会えたという奇跡があったことを忘れちゃいけない。あれはトワンの賢さ、山向こうの村人の親切、死体のトワンでも探し出すぞという熱意、この三つが揃って出来たこと。愛おしいものが与えてくれるこの寂しさだけが、真実を形にさせるのだ。(K)
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