2018年12月22日土曜日

音楽の空間

音楽が作る雰囲気は分かっていたけれど、その空間を知ったのは最近のことだ。広がりや奥行きだけじゃなく、風景が立ち上がったりグレーに沈んだりする。良いものを生み出す手助けをしてくれる音楽ならジャンルを問わず好きになれる。

マルキーズ・スコットが素晴らしいのは音楽の空間を緻密に捉えて動かして見せてくれるからだ。彼はいつも踊りながら歌詞を口ずさんでいる。どんな言語の歌でもそうだ。完璧に理解して何度も頭の中で構成して楽しんでいるに違いない。音楽の中で遊べる人たちがいる。そういう人たちは芸術が何のためにあるかなんて考えなくてもその中で生きている。それが超自然のパンだ。

ピアニストの周りの空間を深くしたくなった。鍵盤を叩く手元に光がたまるようにと。(K)


2018年12月21日金曜日

複雑と単純

複雑に見える絵と単純な絵、どっちがいいんだろうと考えて来た。若い頃は色んな要素がたくさん詰め込まれていた方が高度でもあり深遠な気がして複雑なものを描きたいと思っていた。現代的な絵を知るにつけ技法の単純さが表現の力強さを生んでいると思えて単純な表現を目指した。
気づくと最近はそういう事を全然考えていない。複雑でも単純でも、いや例え複雑過ぎても単純過ぎてもその時のイメージや表現したいものが選ぶ世界に誰も文句つけられないよ。

黄色と青だけで終わりそうなこの絵を単純というか複雑というか。。)
光と陰のどちらにも使えそうな「青」。この色を何とか使いこなせないかな、と思っている。(画)

2018年12月20日木曜日

卵の輪郭

トワンが死んで49日経った。今朝のガハクの霊視によれば、向こうではトワンは菩薩さんと散歩しているらしい。天の野はどこまでも明るく広く暖かく長閑だろう。時々ガハクが山で呼んでいる声が響いてもいるだろう。

山散歩するついでに私のアトリエの薪ストーブに焼べるための小枝や倒木を紐で結んでは引きずって降りて来るガハク、「さあ帰るよ!」と辺りに呼びかけると、にっこり笑えて来るのだそうだ。

今夜は彼を包む気体をあたたかく柔らかくする為にひたすら彫り続けた。やっと卵の輪郭がふわっとなった。森を包み込む風の流れが形になった。(K)


2018年12月19日水曜日

影を描く

小学校の国語?の教科書に口絵として載っていたキリコの「街の神秘と憂愁」その題まで覚えた。心の奥に潜むある種の不安や外界の持つ気味の悪さが子供心にも分かった。あの絵を特徴付けているのは「影」だと思う。
ところがいざ絵の勉強を始めると、まず戸惑ったのは絵では「影」を描くべきでないという事だった。古代から近代までの絵画にはほとんど「影」がないのだ。確かにモデリングの為の陰影はあるが事物が落とす「影」は描かれていない。
しかし現実にものを見ると「光」あれば必ず「影」がある。これをどうしたらいいのか…。ずっと気になっていたことの一つだった。キリコのように「影」だって使えるはずだ。(画)


2018年12月18日火曜日

ケルビムの風の吹く方向

渦が巻き上げる風の方向を球体の内側に向けたら、今までどうやっても不安定でグラグラしていた膝や足首の位置がピタッと決まった。うねりながら落ちてくる飴色の激流の方向も定まった。これでいい。空間を自由に流れる川。宙空に渦巻くケルビムの輪に乗って移動する人たち。こういう世界が向こう側には確かにあるという確信が今はあって、そこから意欲や活力をもらっている。(K)


2018年12月17日月曜日

イメージの新しさ

絵具や筆の下から何が現れて来るか、それを見ようとする為の行為を「描く」という。そ例外の目的や意味は全て付随的なものでしかない。(純粋に)「描く」為には付随的な動機や目的は可能な限り捨て去られねばならない。
だから上手く描けないと感じる時は見えているものが上手く描けないのではない。
上手く描けたと感じるのは見ているものが上手く捉えられたという達成感にあるのではない。
イメージの確認ではなく、イメージの新しさを発見した時、画家は上手く描けたと思うのだ。常に新しいイメージがそこに出ていなければ「描く」ではない。(画)


2018年12月16日日曜日

欲望の方向

空から注ぐ蜜のようなベタベタした液体が鹿を発情させた。当て所もなく歩き始める。音楽が聞こえる。甘く優しく滑らかな音のつながり。耳が察知するのは自己防衛のためだけじゃない。美味しいもの、魅力的なものへと情愛の赴くままに動物的なものは行動する。それで良いとか悪いとか簡単には言えないな。罠にかからないように願うばかりだ。

森の中で迷ったときに知性というものが役に立つ。直感を支えるからだ。でも情愛が無くなったらもうだめだ。どこまでも歩いて行けるのは大事なものをずっと愛し続けているからなんだ。(K)


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