2019年6月29日土曜日

額装おわり

とうとう額装終了。と思ったら少し修正の必要あり。展覧会の面倒くささはこういう所にもある。キャプションとか作品リストとかも作らねば。
でも額作りだって集中してやればそれなりに面白そうだ。オリジナルというだけじゃなく色に凝ったり研ぎ出しで模様を出したりやってみたいものだ。絵を描きながらその絵を入れる額も同時に作って楽しむというのもいいな。ゴッホは注文した額を早く受け取りたい。その額に入れないと絵の仕上げができないと手紙に書いていた。金もないのにずいぶん贅沢な事を言うなと思っていたが本来それが最高なんだよな。(画)

2019年6月28日金曜日

水の中にKと刻む

どこにサインを刻もうかさんざん悩んだ挙句、水の中の一番暗く深い場所を選んだ。見え難くて目立たないところに水草のようにふわっと立っている風情でいいんじゃないかと。

彫りながら辺りを見回すと、気が付くことがいろいろある。水の中の月もうんと薄く抑えた。ほんのり白い月だ。ほとんど見えなくても構わない。見たい人、見ようとする人だけが出会う月なんだから。(K)




2019年6月27日木曜日

イタドリの季節

犬の散歩で裏山に上がるのを日課にしていた頃、禿山のようだった山の木が少しずつ大きくなり森が徐々に再生していくのを見て楽しんでいた。やがて木に絡みついて繁茂する藤蔦の多さが気になった。木が苦しんでいるように思えて時々引っ張り下ろしたり時には鎌を予め用意して切って回った。そんな時トワンは勝手にその辺を走り回っていた。次にイタドリがやたらに繁殖して大きな衝立のようになると森の下草が生えないし全体に暗く鬱陶しいと思えた。それも伐採の対象になった。鎌を使うとイタドリは気持ちがいいほど根元から簡単にポコポコ切れる。帰りたがるトワンを無理に待たせて作業に熱中した。
今ではあゝいうことにどんな意味があったのか、どうしてそんなことに夢中になっていたのか自分でも分からない。
またそんな季節がやってきた。(画)


2019年6月26日水曜日

大きな鳥の翼に包まれて

鳥にも600番の砥石をかけたら、翼がふんわり膨らんでふわっと浮上した。翼の下に吹き込んだ風が山を鳴らして過ぎて行く。大きな鳥の飛来は何を意味するのか?翼の内意は深慮。あの翼に包まれていれば混迷のこの時代も無事に生き延びられるだろう。
 どうでもいいことに振り回されないようにしよう。意識が変われば風景は明るくなる。見えるものが違ってくる。このレリーフもあともう少しで完成だ。(K)


2019年6月25日火曜日

人造時間

あの日あの時見たものあった事が今はどこにもないということが当然だと思えないままだ。
時間は人が主体的に作り出し、過去や未来というあやふやな感覚をもたらした。時間という方向を持った概念と僕の生感覚が釣り合わない。
いつかどこかで見た在ったという記憶も、存在という概念が作り出されるとそれは幻想に作り変えられたのだ。だからどちらも元々は人が自ら作り出したものでしかない。
過去や未来の通過点ではない絶対的現在にいて、幻影でなく真に在るものを見ることができるだろうか。美を通して感知できるなら。(画)




2019年6月24日月曜日

月を研ぐ

月の夜空に砥石をかけた。海の底も磨いてみた。空間というのは色で出すものだということがやっと分かった。色即是空 空即是色 これがどういう意味か本当には理解していないけれど、大理石のレリーフにこんなに深く澄み切った空が出せるなんて思ってもみなかった。それでも何とか彫りたいと、ずっと憧れて想っていたから現出してくれたんだ。あの冬の満月の夜の白い人だって、ガハクがずっと会いたがっていたから出て来たんだよ。欲しくもないのに欲しくもないものを競争のためにただ優位に立ちたいが為に他人をねじ伏せてまで掠め取ろうとする者たち。彼らの知らない美しい世界は私たちのすぐ目の前にある。(K)


2019年6月23日日曜日

トワンと夢之丞

殺処分寸前の犬がスカウトされ夢之丞(ゆめのすけ)という名の救助犬になったという話をネットで見た。処分場から出された時の怯えた表情が家に来た頃のトワンを思い出させた。すっかり元気になって活動している成犬の姿も似ていた。
久しぶりの展覧会を前にして気持ちがすっかり変わったのを感じる。
今まで自分の人生も大部分が終わった、できることはできたしできないことは今後もできないだろう、後は死ぬまで淡々と絵を描けばいいと思っていた。それが違うんだ。僕らは殺処分寸前なんかではない。目標を持ち到達点を意識して努力しよう。殺処分を恐れながら自己欺瞞としての諦念という精神的堕落から抜け出さねばならない。
銅版を彫りながらそれを思い出していたら、ジャコメッティがもしデューラーのような技術を持っていたらどんな絵になっただろうと連想した。
残念ながらそんな仮定は無意味だ。トワンは夢之丞にはなれないしその逆もない。(画)

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