2021年12月14日火曜日

広い道

30年前の大理石の彫刻『広い道 、狭い道』の続きを彫り始めた。

これは彫り直しではなく、途中で技術的限界とイメージの貧困と迷いが生じたから、そのままに放ってあったのだ。今ならいろんなものをもっと自由に刻めるはずなんだ。

どこから取り掛かろうかとしばらく眺めていたが、まず広い道からいじってみることにした。女の子が道の中央に立っている。周りで飛んだり跳ねたりしているのは、あの頃の夢に出て来た霊たちだ。ピッポパッポ ピッポパッポ と、機械仕掛けの人形のように手足を動かすその様子は、ダンスの練習をしているみたいだった。表現になる以前の退屈で単調で冷たい繰り返し、その名は訓練。広い道を行く人は能力を競わなきゃならないんだ。消耗戦のはじまり。愛とは遠い世界に広い道は続いていく。

月が端に彫ってあった。夜を照らす満月だ。もっとくっきり彫ろう。(K)



よく見られている記事