2020年11月14日土曜日

キツツキの音

昨日も今日も コンコンコンコンとキツツキの音が聞こえたそうな。落ち葉を踏む音に合わせるように響いて来る。夏場はインパクトドライバーみたいな連続音だったのに、こんなに明るい晩秋の森だと、やっぱりのんびりと叩くのかな?

あゝそうか!冬が近いから、樹皮が固いのかもしれない。乾いてかっちり引き締まった木に穴を開けるのは大変だろう。嘴で彫るんだものねえ。

アトリエで大理石をコツコツ彫っていたら、山の手入れを終えて降りて来た地主さんに、「上の方で聞いてると、キツツキみてえだよ」と言われたのを思い出した。小さな力で最大限に目的を果たそうとすれば、その音は遠くまで響くんだなあ。懐かしい人を思い出した。(K)



2020年11月13日金曜日

強い額

強い額だ。男みたいに見えるが、これも妻の肖像だそうだ。もうここまで来ると、印象を描いているんじゃなくて、事実を描いているんだろう。実際この9ヶ月の間にずいぶん強くなったものねえ。

描かれる方も 描く方も 意識が立ち上がっていなければ、真の姿は出て来ないだろう。尾ひれを付けずに描くことが出来たときに、「あゝ 絵を描いて来て良かったなあ」と思えるのだ。ガハクがそう言ったのを聞いたのは、たしか数ヶ月前だった。

特別なことなんか何もないのに そのまま描くということが出来なくなるのは、そのまま描くとつまらないものしか出来ないと自分で決めてしまうからだ。尊大と卑小を行ったり来たりする意識が、どんなに人を苦しませ病ませるかということをよく知っている。

ところで、今日から筋トレメニューに軽いジャンプを入れた。ガハクがジャンプを始めたそうなので、私もやってみようと思って。足の裏の感触を感じながら柔らかく軽くジャンプしたら、体が揺さぶられて面白かった。少しずつ慣らして、そのうち縄跳びができるようになりたい。(K)



2020年11月12日木曜日

秋の大収穫!

 去年の今頃は、猪にネットを破られカボチャを食われ、次の日はそこから猿が進入して里芋を掘られ、すっかり空っぽになった畑で呆然と立ち尽くしていたのだった。

冬の間にコツコツと作り直した獣よけの柵とネットの覆いは、完璧だった。一度も突破されずに済んだ。獣たちは諦めて通り過ぎていく。

こんなに大きな白菜が採れたのは初めてだ。近所の人に頂いた小さな種生姜6個が、こんなに増えた。土って凄いな。埋めておくだけで増えるんだもん。里芋以外は、ぜんぶキムチに使う。うちの白菜キムチは美味いんだ。

手前の地面が剥き出しになっているのが分かるだろうか?毎日ここでフットワークをしているから草が生えなくなったんだ。仕事前にアトリエ前の野原で、バスケットのディフェンスで覚えた斜め走りをやっている。足腰がしっかりして、この収穫がある。今は、彫刻も畑も楽しい。(K)



2020年11月11日水曜日

歌う森

ザラザラした樹皮が幹にぴっちり張り付いて、洗い晒しのGパンみたいだ。

眺めているうちはトワンの森だけど、内部に入るとガハクの森になる。そして、今朝見たものは夜には画布に乗り移る。「歌うように描きたい」と言っていたガハクの時間は、こうやって作られていく。(K)



2020年11月10日火曜日

ストイックな空間

今朝、このアトリエのことを「ストイックな空間」とガハクに言われた。久しぶりに聞く言葉だった。学生の頃によく言われていたんだ。石を彫っていても、粘土で裸婦像を作っていても、ストイックだって。今思えば、あれはただの流行りで、語彙の少ない学生同士が相手のことを褒めもせず貶しもしないで評論するときの手法だったのだろう。

でもガハクの使う「ストイック」なら理解できる。人を指すのではなく、場に漂うスフィアのことだ。誰かに見せたり見られたりすることで歪んでしまう自意識が、ここには無い。

背中を彫るために石を回転させようとしたが、やめた。顔も時々眺めながら彫りたいので、投光器で背中を照らすことにした。赤いっぽい300wの電球で、私の背中も暖かくなった。

「石を彫っていることが、時間を作っているのだよ」とガハクが言う。余裕があり暇があり時間があるから石が彫れるのだなんて誰かが思ったとしても、ここには何にも届かない。それほど静かで寂しく護られた場所なんだ。(K)



2020年11月9日月曜日

夢を導く赤い馬

朝食の時ガハクが、「また夢を見たよ」と話し始めたのだけど、それが長くて複雑で聞いているうちに頭が回らなくなって来た。もっとポイントを絞って話すように頼んだら、「いや、僕にもはっきりしない夢だったんだよ」と言う。

【 子供のガハクがどう言うわけか、一人でパリ空港に到着。チケットのような紙切れを出したのだが、係官に止められて通してもらえない。それにフランス語だし、言ってることがよく分からないのだ。大人の影に隠れて税関をすり抜け、地下鉄のプラットホームまで来たら、風変わりな日本人の男がいた。ケイタイで商談の失敗と相手のミスをがなり立てている。怪しみながらも、日本語が通じる男に話かける。すると、山本浩二の三塁ホームランのことで盛り上がるが、少年ガハクはそのシーンは実際には見ていない。やがて抜け道を教えてくれた。(あちこち通って)最終的には船に乗ってマルセイユへ出れば良いと言うのだ。でも、ガハクの目的地はマルセイユだったの? いや、ごく近くの日本のどこかに行きたかっただけなのだ。そこに行けば、家に帰れるから。】

馬は真理のメタファーと言うではないか。赤い馬のタテガミから 月がこぼれる。(K)



2020年11月8日日曜日

トワンが初めて夢に出て来た

今朝はガハクの方が早く起きた。夢にトワンが出て来たそうだから、気分が良かったのだろう。庭で灯油ストーブの掃除をしていて、横にトワンが寝そべって眺めているという日常の風景。

アメリカ大統領選挙は、やっと決着が付いた。一人一人の苦労がすぐに解決するわけじゃないのに、皆があんなに喜んでいる。孤独が癒されるわけじゃないのに、明るい気分は伝播する。

よく通る声で副大統領になる人が言った。 " While I may be first, I won't be the last. " 初の女性でアジア系の彼女は、ウェディングドレスのような光沢のある白のパンツスーツに身を包んでいた。日本の女性議員たちの顔がパッと浮かんだ。元気で鋭く歯に衣着せぬ発言をする彼女たちも、今朝はさぞ羨ましく眩しく眺めただろう。

夜になって、ビデオニュースの番組を観た。ロッキード事件をずっと追って来たジャーナリストが、巨悪の正体を突き止め、本に書いたというのだ。アメリカが如何に戦後からずっと日本をコントロールして来たかがよく分かった。思い当たることがある。ぼんやりしていたら見落としてしまうし、この状況を勘違いしてしまいそうだ。

悪いことと善いことが滲み合うことがないように、空を見上げて大きく深く呼吸をしながらペダルを漕いでいる。(K)



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