2018年7月7日土曜日

視線の強さ

この人には強い視線を彫りたいとずっと思っていたが、今日がその時だったようだ。アトリエに着いて筋トレを済ました後、すぐに目に取り掛かった。引き上げられる人より、引き上げる人の方が厳しい目をしているに違いない。澄んだ優しい瞳の中に強い光が宿っていなければ引き上げる途中で取り落としてしまうだろう。瀕死の人を助けるには二乗の飛翔力が必要なのだ。蛍が道まで出て来てふわふわと自転車の横を過ぎていく。昼間は蝉が鳴き始めた。(K)



2018年7月6日金曜日

愛するもの

水平線を措定しないというよりも、水平線を意識しないで形を配置できないか。
ガジュマルの樹が大きくなってくると地面の位置も広さも変わって来る。
左側にいた人物を複数にしよう。愛するものを増やすのだ。
トワンも描き直し。青ざめた馬を見よという黙示録の一節を思い出したがこの子は全然違う。(画)

2018年7月5日木曜日

リンゴの軸

今日はずっとこの人の首を彫っていた。膨らんだ肩や胸はリンゴの実で、窪んだところからスッと伸びた首は果実を支える軸だ。いつも眺めているリンゴの木が、素敵な形を教えてくれた。美しいものは力と勇気を与えてくれる。そういうものが本当の美だ。(K)


2018年7月4日水曜日

他人の価値

Sの霊はあの目の大きな種族の夢を見た時からずっと僕のそばにいたらしい。だから「白い人」も彼なのかもしれないと思えて来た。
そういえば彼は抽象画を将来は描きたいと日記に書いていたそうだ。そして色は体験しなければ出せないとも言っていたらしい。 だから山に登って青い空を見たいと。
確かに画家が使う色とは彼の体験そのものでしかない。画家が貪欲に独自の色を追い求めるのはそのせいなのだ。他人が見つけた価値にかまっている暇はない。(画)


2018年7月3日火曜日

百済観音のシルエット

樹木を彫りながら、法隆寺の百済観音を思い出した。細く緩やかに流れる腰のシルエットがとても美しかった。木の中に人を見る。人の中の植物的なものからいい匂いが立ち昇る。『死なない人』というのは、植物の永遠性を獲得した人じゃないだろうか。受容された死が永遠への入り口だ。(K)


2018年7月2日月曜日

ともだち

画布と絵具を前にして、どういう絵を描くかどういう絵にするかと迷うことはない。そして俺にそんな絵が描けるかと不安になる必要もない。
絵に現れるのは画家の思想そのものだが怖がる必要はない。色や形が自分に対峙したとしても絵具は昔からの親友だ。発見の喜びをもたらすこともあれば、暗中模索の不安や冒険にどこまでも一緒に付き合ってくれる信頼できる友だ。
だから迷った時は常に彼らの力を借りればいい。(画)

2018年7月1日日曜日

支える月

死にそうだった人が起き上がって笑ったのは、ちょうど眼前に月が昇って来たからだろう。月は赤いときと黄色のときがある。そしてもう一つ、澄んだ白い月がある。昨夜の月がそうだった。センチメンタルな重さがなくて惚れ惚れと眺めた。一昨日の月は赤く泣いているようだったのに一晩でこうも美しく変身するのかと感心した。今夜は少し寂しげで小さかった。満月を過ぎたからかな?(K)

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