2018年6月2日土曜日

超常現象

スコットのダンスを見ていたら右腕にポツンと水滴が落ちた。あゝこれはよく何もないのにチクっとしたりする例の神経の突発的反射作用だろうと思いながらも当たった所を見た。実際に濡れて光っていた。左手の指で触わると確かに液体の感触が。雨漏り?思わず天井を見上げた。

白い人を見てからもう何十年経っただろう。あの頃は神経が高ぶっていたのか白い人の後、家の前の通りを歩いている緑の人も見たっけ。
今またあの時のような心の状態に入りつつあることの兆しだろうか。(画)

2018年6月1日金曜日

水研ぎ

400番の砥石で水をかけながら磨いている。奥まったところにはサンドベーパーも使う。小さく折り畳んでハングした面に当ててちょこちょこ動かしていると、だんだんキズが取れて表面が滑らかになる。色合いも変わって行く。こんな辛くて面倒な作業なんかどうでも良いことだし、本質には大して影響しないものだと軽んじていると大切なことを見失う。美しく純粋なものへの憧れがなければ力も湧いて来ない。それは地にあって天に求めるものなのだ。

夕方雨が上がったので畑に入った。家で育てたオクラの苗をサヤエンドウの間の草をかきわけ植え付けた。辺りが黄色っぽく光るので空を見上げると、雨上がりの空が金色で美しかった。どうも近所のぬいちゃんが亡くなったようだ。一昨日黒服を着た人たちが道に集まっていた。ザシッザシッと万能を振り下ろす音に遠くを眺めると、小さく動く彼女の姿があったのだけど、もう見ることはできない。夜になって瀕死のアダムの顔を少し彫り直して今日は終了。(K)


2018年5月31日木曜日

無意識

この女の背景がうまく決まらない。色々とやってみるがどれも進むべき方向が見えないまま頓挫してしまう。どうしてうまく行かないのか…。
行為の意味を自問したくなる本当の理由は、結果が出ないという事に他ならない。うまく行っている時は意味や目的なんか自問したりしない。だからもはやその理由を考えるのをやめるように努力しながら描いている。
要するにうまく行くまでやり続ければいい、ってだけのことだ。(画)


2018年5月30日水曜日

石の摂理

やっと荒砥をかけ終わって次の番数に移る前に水で洗ったら、くっきりと石の模様が現れた。新しき人に向かってビビビッと稲妻が走っている。しかも彼の体には一切触れずに。うまく行った。この人のイメージはトワンから始まったのを思い出した。丸裸のままで美しく可愛らしい。昨夜トワンの下瞼にダニが喰い付いているのを見つけた。虫眼鏡で覗きながらライトを当ててピンセットで取り除いてやったのだが、じっと動かず耐えていた。信頼を得ている。これまで一度も彼に不利益なことをしたことはないからだ。あ、ただ一度だけ遠出の旅に連れ回したことはあるけれど、でももうこれからはそういうことはないからね。(K)


2018年5月29日火曜日

シルバーホワイト

絵具に使う顔料には人体に有害なものがある。例えばシルバーホワイト。古代人が焚き火の跡から発見したと言われている。
化粧用としても使われ有害だと分かった後でも使われ続けている。ゴッホの時代には未だ絵具が手練りで作られていて、職人が一人毒にあたって死んだと書かれている。
それで思い出したがゴッホが使う絵具を練っていた職人が、ひまわりの絵を絵具代の代わりに要求し、割りに合わないとゴッホが断ったことも書かれていた。誰もが相手にしなかった作品の価値を画家も絵具屋もしっかり分かっていたことに感心してしまう。
暫く市販品を使っていたが、なくなってしまったので久しぶりに顔料を練った。(画)

2018年5月28日月曜日

死の効用

果たして私はほんとうに愛する人の死を受けとめることができるだろうかと思いながら彫って来た。死の恐怖と戦うために、とうとう天使も出て来た。死にゆく人死んだ人のことを思っているようでいて、実は先行するのはいつも自分だ。悲哀は常に『自分』を見張っている。それが逆転したのは、雲が湧き立つ谷から生まれ出た新しい人の純真を形で認識したからだ。「人の子のようなものが現れて」というくだりは、人の再生のビジョンを目の当たりにした人が書いたのであろう。そういう人は勇気を与えてくれる。(K)


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