2021年5月15日土曜日

おたま金魚

 次々と死んでいく金魚に、「金魚って難しいんだねえ」と、ガハクと何度口にしたことか。4月の初めに大阪から取り寄せた11匹のコメットは、今は3匹しか生きていない。

気を取り直して、今度こそと思ってすぐお隣の群馬県のお店を見つけて、和金5匹を注文。添付されていた育て方通りにやっているからか、今のところ皆元気だ。

⇩これは今日届いた『おたま金魚』だ。前回と同じ群馬のチャームというお店から。しかし、開けてびっくり!太くて、丸くて、でっかいのが、お尻をふりふり泳いでいる。こちらの想像を遥かに超えていた。しばらくガハクとぼんやり眺めていた。金魚というのは、もっとスリムで、シャープで、キラリと身を翻して泳ぐものではなかったっけ、、、

「おたま」という意味は選別外という意味なのだそうだ。金魚の種類なのかと思っていたが、どうりで出目金もやたらに目がでっかいし、姿が不恰好なのか。

それでもじっと眺めていたら、だんだんこの子らの性格が見えて来た。みんな仲良しなんだ。一列に並んで泳ぐかと思うと、おしくらまんじゅうみたいに1箇所にぎゅっと集まって、ふりふりひらひらしながら話し合っている。太っているからすぐに死にそうもない。と言うか、こちらを楽しくさせてくれる。面白いもんだなあ、金魚の姿にすっかり気分が明るくなった。(K)




エデンの小道

 山のてっぺんまで小道がずっと続いている。この一年、ガハクが毎日歩いて作った踏み跡だ。

朝登ったのと同じ道を、夕暮れにまたガハクは自転車で登る。今日は鹿に遭ったそうだ。山の入り口の林道をガサゴソと動物が動く気配がしたかと思ったら、「真っ白いお尻が林道を駆け上って行ったよ」と言う。鹿のお尻は可愛くてよく目立つ。群れの先頭を歩いていく旗印でもあるのだろう。ピンと尻尾を立てて行く。

私も、夕方に自転車で山に出かけるようになった。だんだん距離を伸ばして、やっと頂上に到達したのが1週間前。久しぶりに眺める山の中は、ただ美しかった。ススキが原と呼んでいた荒れた草原は、木々に囲まれた庭園になっていた。

帰りにエデンの門を過ぎた辺りで、ガサゴソと何かが動く音がした。きっとさっきガハクが見たのと同じ鹿だ。夕暮れに水を飲みに降りて来たんだな。(K)



2021年5月13日木曜日

真っ直ぐな視線

人を描くことの難しさは、目なんだ。描き手でさえ、絵から返って来る視線に耐えられない。相手の目を見て話すことができるのは、詐欺師か自信家、そして子供と子供のような人だ。訓練してそのように振る舞うことを覚えちゃった人は、多いけれども。

 「ガハクの青は綺麗やねえ」とクミさんに言われたガハクは、今も変わらず素敵な青を使う。そして真っ直ぐに見つめて来るこの人を包む青は、霊界の透明なスフィアを表している。(K)



2021年5月12日水曜日

石の飛行角度と方向

 踏み台に乗って黒御影石をはつり始めて、ちょっと待てよ、まずいなあ、、、と思った。重いハンマーでカツンと叩くと、石のカケラが鋭く飛び散る。ときどきトタン壁に当たる音もする。屋根を越えるほど飛ぶことは無いけれど、角度によっては隣家のベランダに乗っかることだってあるだろう。

リンゴの木にネットを被せるために作ったT字形の竿があったな。あれを使おう!丈夫な帆布もある。掛け軸みたいにぶら下げてっと、、、なかなかうまい具合にセットできた。この庭にはこの庭に合うやり方があるようだ。

周りに配慮しながらもいつも自由であること、集中できること、ありのまま且つオープンであること。それは、透明な丸い球を作るということだ。(K)



2021年5月11日火曜日

絵の中の肉付け

激しいタッチで描かれている絵の中に、この女だけが彫刻のような肉付けをされていて目を見張った。ジャコメッティがやろうとしていたことだ。スカスカの空間を遊ぶのではなく、内部が充満した肉体を作り上げること。どうでもいいことをあれこれ賑やかに華やかに語るのではなく、大事なこと愛しいもの忘れがたい事柄を描き残そうとすること。限定的で移ろいやすいものに人目を惹き付けることはやめて、観ているものから湧き立つ香りのその向こうにある存在を色で刻もうとしている。だからガハクはこの絵に取り掛かるにあたって、「リベンジだ」と言ったのだろう。(K)


 

2021年5月10日月曜日

黒御影石の音

二人で向き合ってパンをかじっていると、ガハクが唐突に「こうやっていると、死んでいるのか生きているのか分からなくなるよ」と言う。そう言われて周りを見渡すと、採石工場の音は止んで静かだった。「喜怒哀楽がない状態とでも言うのかなあ」と説明してくれた。

今日から黒御影石の部分を彫り始めた。耳栓を外すと、甲高い金属音が辺りに響き渡っていて、自分でもびっくりする。久しぶりに聞く音だ。丁寧に一振りごとに小さな石の山を叩き落として行く。黒と白が綺麗に繋がること、穴のシルエットを美しくすること、柔らかな形を生み出すことを目指している。

午後になると太陽が横から照りつけるので、シートを可動式にした。手動だけど、なかなか上手く作れたと思う♪(K)



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