2021年3月13日土曜日

雨の庭

 天から見たら小さな砂粒のようなこの庭にも、今日は一日中雨が降った。大きな水溜りがあちこちに出来ていて、どこが低いかはっきり見える。

雨に濡れて黒くなった地面と、大理石のカケラを放り込んだ白い場所が、くっきりと鮮やかに明暗を分けて奇妙な模様を作っている。まだほんの一部だけれど、これからもっと石粒を敷き詰めなきゃ、庭の隅までフォークリフトで石を運ぶことは出来ない。さて、これから、どんなマダラ模様になるのだろう?私が彫った一粒ずつの石のカケラだ。だんだん馴染んで明るくなって行けばいいなあ。

フォークリフトはずっと部屋の中に入れていたのに、庭の真ん中でブルーシートに覆われて雨に濡れて佇んでいるのが、なんとも忍びない。そうだ、アトリエのドアの縁に使っていた鉄のアングルが4本あったな、あれを使おう!シンプルなポリカの屋根を作ってやろう。

森に雨が降ると川は白く光る。この庭もゆっくりと白く輝くようになるだろう。ガハクの『漁る人』の森に降り注ぐ雨を見ていると、気持ちが潤って来る。(K)



千里の道の到達点

 遂に千里の道を歩き切った。山の向こうに沈む夕陽に感謝しよう。悪いことも善いことにたわめられ使われるというのは、本当だった。

今朝、6時半にケイタイが鳴った。手伝ってくれる天使からだった。「それぞれの車に乗って、一緒にトラックを借りに行こう。そうすれば俺のダットラでも石を運べるから」

アトリエの解体はすっかり終わって、土地もだいぶ元の傾斜地に削り終わって更地に戻したところに御影石の彫刻がいくつも並んでいる。それを製材所のフォークリフトを動員して、一気に今日中に運び切ろうと言う算段なのだ。

水道工事をやっている会社に7時半に到着。小型ながら3tも積める頑丈なトラックが2台も並んでいた。出て来た社長は布袋様のような福顔でにこやかに笑っていた。この人が天使の仲間なのか、、、とそっと見つめた。後で聞けば、お礼は要らないと言うのを天使が説得して「俺が借りるんじゃないんだから受け取ってくれ」と頼んだそうな。天使のネットワークは見えない糸で繋がっている。

うちの庭はぶかぶかだ。なるべく隅っこに原石のでかいのを置きたいと思うのだが、フォークリフトで奥に突っ込むと、石の重みでタイヤが10cm以上も沈んでしまう。そうなると脱出が難しい。当て木を高く積んで、空回りしない程度に吹かして難を逃れること数回。無事にぜんぶこの庭に収容した。明日は雨。明後日から造園に着手する!

⇩ガハクの油絵100号『白い旗』の空の部分だ。宙を舞う不吉な布は消えて夕焼けの光が金色だ。暗い日々の終わりはこうやって訪れる。(K)



2021年3月11日木曜日

ほんとうの春

ガハクの山散歩ルートにも春が来た。一斉に芽吹き始めた木々の小枝が、赤く色づいている。庭のスモモにも小さな花芽が膨らんだ。真っ白な可愛い花がもうすぐ咲く。

明日が最後の撤収だ。いよいよだ、、、慎重にやろう。予行演習はやっておいたから、大丈夫。7時半にトラックを借りに行くと言っていたから、私たちも7時半にはアトリエ跡地で待っていよう。しっかり玉掛けして、安全で完璧な仕事をやり遂げるんだ。

トワン、明日も頼むよ!(K)



2021年3月10日水曜日

フォークリフトの引っ越し

昨日まででアトリエ撤去作業は終わった。残っているのは、産廃業者に引き取ってもらう廃材と、家に運ぶ石の彫刻と原石だけだ。そして今朝は、先陣を切ってフォークリフトが家に運ばれた。

重機運搬専用車にフォークを載せるのがなかなか大変だった。馬力が弱くて、大型トラックの荷台までの急角度が厳しいのだ。勢いを付ければ上れるのだろうけれど、プロは決して無茶はしない。狭い道板から脱輪しないように、車輪の位置を確認しながらゆっくり慎重に操作していく。ハラハラしたが、しっかり定位置まで自走してワイヤーで固定された時は嬉しかった。

うちの庭まで6kmの旅だ。ガハクとライトバンに乗り込み、トラックの後ろから着いて行った。黄色の車体がR299を滑らかにゆっくり運ばれていくのを眺めていた。荒涼たる景色、寂寞たる想いが過ぎ去っていった。

家の近くの踏切前の広場でフォークリフトが地面に降ろされた。運んでくれた土建会社の専務と監督にお礼を言って、すぐに運転席に座った。路地の砂利道を走り、ガハクが開けてくれた門を通って、製材所の社長が刈り込んでくれたモミジを過ぎ、庭に入った。

「ママが帰って来た!」トワンの声が聞こえるような気分だった。超嬉しい朝の光♪(K)



2021年3月9日火曜日

道端の花

 こういうちょっとした草むらの花が描けるようになったガハクは、どこにこういう花が咲いているかを知っている。ここは、森の切れ目の日当たりがいい場所だ。

「僕が変わったのは、死にそうになったのに生き返ったからだ。前は自分で生きていると思っていたけれど、今はいろんなものに生かされていると思うようになった」と言う。

この1ヶ月毎日アトリエの解体作業に勤しんでいるガハクは、(これまでもずっと一緒にいろんなことをやって来たけれど)ほんとに愉快そうにやっている。ツルハシを振ってもぜんぜんへこたれないし。どこからあんなパワーが出て来るんだろう?

「どんなに疲れても、ちょっと休むとまた元気になるよ」と、自分のペースを掴んだようだ。

生命力というものは、内側からも外側からも注ぎ込まれるけれど、受け取る側の用意がなければ通り過ぎていくだけだ。春はそういう季節だ。(K)



2021年3月8日月曜日

大きな石を動かす技術

37年の間に地面に喰い込んで沈んでいた石を動かすのに、まず箱ジャッキを使った。爪が掛かるようにガハクがスコップで地面を掘り、そこにジャッキを差し込み持ち上げた。ワイヤーロープで縛られた石が、ゆっくり引きずり出される。その時フォークリフトに伝わって来た感触が、思ったよりも軽く感じらた。

うちの庭に運んでトラックから下ろせるだろうかという心配が、この瞬間に消えた♪

電信柱もフォークリフトで引き抜いた。明日は電柱の根元に分厚く付いている基礎のコンクリートを引き剥がす。石を彫る道具を忘れないようにしなくちゃ!(K)



2021年3月7日日曜日

3日で立て直す

坂を崩すと、大理石の大きなカケラがザクザク出て来た。明日ライトバンの荷台に載せて家に運ぼう。トワンのお墓の後ろに生えている月桂樹の根方に転がしておこう。いつかまたガハクが面白いものを彫りたくなった時にも役に立つ。

大きなものを彫っている時には、小さなカケラは屑に見えた。小さくて売りやすいものを作り始めたら、自分が小さくなって行くようで嫌だった。どっちも間違いだ。

意欲と用は一致する。そういう領域でこれからは生きて行くんだ。(K)





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