2018年9月29日土曜日

許された女

誰にも似ていない女の顔がやっと出て来た。元から自由な女というのはいないのだから新しく作り出さなければ有り得ない。乏しさと充実の大きな転換、価値の逆転、裸という美しい衣、そういう形(あるいは器)がやっと出て来た。(K)


2018年9月28日金曜日

生きる恐怖

大して広くもない面の削り落としに時間がかかった。途中でめげそうになるとKの彫刻のことを考えて頑張った。
銅版面のミリ単位の削り落としなんて、あの仕上げまで持っていく精神力と仕事量の大きさを思えば何でもないじゃないか。近くにそういう人がいてくれるのは大きな励みだ。僕らはチームなのだ。何でも一緒にやってきた。これからもずっと一緒にやっていく。
子供を道連れに無理心中なんて、昔からちっとも変わらず生きて行く恐怖が世の中を浮遊している。俺たちは負けないぞ。
疲れていると作品がつまらなく見えるそうだから、また明日だ。(画)

2018年9月27日木曜日

瞳を深く

瞳の真ん中に残しておいたキラッと光る出っ張りがだんだん目立って来たから、今日は思い切って平ノミの角で瞳を深く抉った。そしたら、ぜんぜん違う人が出て来た。どこかで見たことがあるような人だなあと思いながら彫っていた。誰に似ていても構わないのだけれど、善良で野生的で天的な顔になれば最高だ。
月が大き過ぎる気がして彫り直している。位置も修正。もっと軽くなるように。月は空に浮かんでいるの。(K)

2018年9月26日水曜日

行き先

最近の呻吟のおかげで自分の何かがとれたような気がする。自由な感覚がやってきた。ずっと楽に絵を描けそうな気がする。パレットに並ぶ色数に不満がなくたったと同時に、銅版画のインクの黒の色にも不足がないと見えて来た。
自分の行き先を決めつけてはいけない。行くところまでいけば必ず何かに出会えるものだ。(画)


2018年9月24日月曜日

新しい人

新しい人に会いたいと思いながら彫っている。少しずつ古代の人に近づいているようだ。

昨日ぞうけいに来た子に聞かれた。「先生んちテレビないの?テレビ見れないと困るでしょう」
内的流入が滞るからもう見ないのだけれど、インターネットで用は足りるからと答えた。

光は速いよ。戦車がカクカク動くこともないし、ラグったりもしなくなった。情報量よりも本当のことを知りたいだけなんだ。無駄なこと、どうでもいいことで随分悩まされ煩わされて来た。目が醒めるような鮮やかな色、見る人がいなければ滅びてしまうものに目を凝らす。

自転車で走り出してしばらく、カーヴを曲がったら月が現れた。雲の縁を染めながら動いていく。丸く光る大きな球だ。(K)


色彩の喜び

どうしても必要な色というのがあるだろうかと自問してみる。赤や黄色はカドミウム、青はウルトラマリン…その他にもなくてはならないという色があるように思うが、嫌それだって別の色でもいいだろう、これしかないという状況なら色環に偏りがあっても絵は描ける。白は?いや白だって無くちゃいけない訳じゃない。画布の白さを利かすとか、白じゃなくても白くみせる方法とか。ある色だけで十分いい絵が描けるはずだ。(画)



2018年9月23日日曜日

新しい顔

全く新しい顔にしようと目から彫り始めた。次に口を深く刻んで、鼻梁は短く、額を明るくした。明るさとは何か?意識が常に光に照らされている状態を言うのだろう。

すっかり暗くなって外に出たら、月が出ていた。夏は山に隠れるほど低かったのに、もう山に触れることなく浮かんでいる。冬の夜を照らしてくれる月。月にこそ愛を探せとウィリアム・ブレイク。 この人は月の人で意識が明るい人だ。この人について行こう。(K)


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