白く細くすーっとした人をイメージしながら彫っている。右足を後ろに引かせたら、棒立ちだったのがやっと動き始めた。翼が手になる。
天使が手と翼の両方を持っているのはおかしいと、ずーっと思って来た。ほんとうは、鳥のように、翼は手でもあり腕でもあるはずだ。そしてその根元にはガッチリとした逞しい肩が柔らかな羽毛の下に隠されている。
優しくふんわりと包まれた小さな存在が、最内部に住む無垢なる人だ。持とうとして持てるものではなく、知らない間に与えられたの。だけれど無自覚なままでいるといつか失くしてしまうもの。子供の絵心がそうだ。アーティストで未だに無くさずにいる人少なし。(K)
2019年8月3日土曜日
2019年8月2日金曜日
方舟と刀
惹きつけられるように壁にかかっている絵を見つめた幼子が「あそこは川だね、森の中をずっと流れて行って遠くの海に繋がっているんだよ、海の前に何か大きなものがあってその横に穴が空いていてそこからハシゴみたいなものが降りてる。空にあるのはお月様」と説明してくれた。そして「いつかこんな絵が描けるかなあ」と。子に答えて母が「今からもっと練習していけば大人になったら描けるようになるかもしれないよ」。
いや、さにあらず、君が全ての思い込みや他人の評判など気にせずその純真な心のままに描けたなら、その時はこんな絵の何倍も優れたものが描けるに違いないんだよ、と心で僕は呟いていた。
今日念願の居合刀が届いた。鞘も鍔も柄も全てが懐かしい感触。正座をして袴の帯に差し両手を膝に乗せ前をきっちり向いたら解き放たれた子供のような気持ちがした。明るい前向きな空間がそこにあった。
絵だってこんな気分で描けたらきっといい絵になるだろう。(画)
いや、さにあらず、君が全ての思い込みや他人の評判など気にせずその純真な心のままに描けたなら、その時はこんな絵の何倍も優れたものが描けるに違いないんだよ、と心で僕は呟いていた。
今日念願の居合刀が届いた。鞘も鍔も柄も全てが懐かしい感触。正座をして袴の帯に差し両手を膝に乗せ前をきっちり向いたら解き放たれた子供のような気持ちがした。明るい前向きな空間がそこにあった。
絵だってこんな気分で描けたらきっといい絵になるだろう。(画)
2019年8月1日木曜日
内なる人
ガハクの絵の中の小さな女の子を見た人が、「たしかお二人にはお子さんはいらっしゃらないんでしたよね」と聞く。その時は、心の中に住む小さく愛しい無垢なるものの存在について説明した。
夜の軒下で石を彫っていたら、ウリボウが目の前を行ったり来たりしたことがある。あれは可愛かったなあ。アトリエにやって来た狸に煮干しをやったら、毎晩来るようになって、とうとう彼女を連れて来たこともある。びっこを引いてる母猫にパンの耳を投げたら、美味しそうに食べた。やがて子猫をぞろぞろ連れてやって来た。毎晩コツコツと石を彫っていると音につられて愉快な動物たちがやって来た。
あの頃の夢のような日々はもう来ないのかと思っていたけれど、今日は野原が赤く染まって夏水仙が輝いて見えたし、暗くなったら野兎が覗きにやって来た。私がやっていることを森の中から見ている者たちがいる。
昨日と今日で胸の子供をすっかり削り落とした。もうお人形のように置かれた像ではなく、その人の内に住む人の姿を彫りたいのだ。(K)
夜の軒下で石を彫っていたら、ウリボウが目の前を行ったり来たりしたことがある。あれは可愛かったなあ。アトリエにやって来た狸に煮干しをやったら、毎晩来るようになって、とうとう彼女を連れて来たこともある。びっこを引いてる母猫にパンの耳を投げたら、美味しそうに食べた。やがて子猫をぞろぞろ連れてやって来た。毎晩コツコツと石を彫っていると音につられて愉快な動物たちがやって来た。
あの頃の夢のような日々はもう来ないのかと思っていたけれど、今日は野原が赤く染まって夏水仙が輝いて見えたし、暗くなったら野兎が覗きにやって来た。私がやっていることを森の中から見ている者たちがいる。
昨日と今日で胸の子供をすっかり削り落とした。もうお人形のように置かれた像ではなく、その人の内に住む人の姿を彫りたいのだ。(K)
2019年7月31日水曜日
「彫る」
どうしても描けなくなってしまった時期に、油絵でなく版画ならできるかもしれないと思ってやり始めた木版画。油絵のようにすぐに絵にならない、彫りと刷りという描くだけでない技法に何か突破口のようなものを見つけようとしたのだろうか。小さな版面から次第に大きな板に向かっていくと「ノミで彫る」という感覚が自分は好きなのだと気付いた。絵描きより彫刻家になりたかったのだ。それも「彫る」彫刻家に。そんな気持ちも「彫る」版画をすることで少し満足できると分かった。(画)
2019年7月30日火曜日
内側と外側
外側から彫るのが彫刻だけれど、内側から見えて来るものがあって初めて形が動き始める。生き生きとして来る。胸元に立っている小さな子がこれからどうなるかが見ものだ。青白く輝く白い人のように彫りたい。外から来たものではなく、内的な人の表象として。内的な人が覚醒して初めて人は生き始める。それまでは人間の形をしているだけで、まだ人ではないのだ。ワニであったりヘビであったりするものが、鳥になったり馬になれるだろうか。そのくらい大きな跳躍が意識の革命なんだ。内側から見えて来るものに従う。
頭が小さくなったので肩幅を狭くした。服も革ジャンから柔らかな麻衣に変えた。胸元の小さな鈴のボタンがときどき可愛い澄んだ音を立てている。(K)
頭が小さくなったので肩幅を狭くした。服も革ジャンから柔らかな麻衣に変えた。胸元の小さな鈴のボタンがときどき可愛い澄んだ音を立てている。(K)
2019年7月29日月曜日
鳥の街?
「赤い街」に鳥を何羽描けるか分からないが増やしている。
あちらこちらへと描き増しているうちに、空間の広がり奥行きを暗示するのにこれほど簡単なイメージもないと分かった。大きい鳥は小さい鳥より近くに位置すると見えたらそれだけで距離感が出る。色と形が同じであればその感じは強まる。反対に大きい鳥と小さい鳥の形と色を変えれば二羽は同一平面上にいると見えるかもしれない。そんな具合に絵を見るルールを逆手にとるのも方法の一つだ。
鳥をたくさん描いていると「鳥の街」という以前描こうとしたテーマを思い出した。(画)
あちらこちらへと描き増しているうちに、空間の広がり奥行きを暗示するのにこれほど簡単なイメージもないと分かった。大きい鳥は小さい鳥より近くに位置すると見えたらそれだけで距離感が出る。色と形が同じであればその感じは強まる。反対に大きい鳥と小さい鳥の形と色を変えれば二羽は同一平面上にいると見えるかもしれない。そんな具合に絵を見るルールを逆手にとるのも方法の一つだ。
鳥をたくさん描いていると「鳥の街」という以前描こうとしたテーマを思い出した。(画)
2019年7月28日日曜日
正しさを避ける人たち
今日は庭に猿が3度もやって来て、ネットの隙間からトウモロコシを引き千切って食べて行った。まだ小さくて美味しくもないだろうに。山の食べ物より、人の畑の方が良いらしい。都市が人々を吸い寄せるのに似ている。正しさを避けるのが最近の若者の特徴だと宮代真司が言っていた。"don't biieve over thirty" という言葉を思い出す。年寄りや年長者を信じるなと学生闘争上がりの先輩が言っていた。今は若者を疑っている。この人たちは何を根拠に生きているのだろうと。利用度安全度安逸さが基準なのではないかしら。
彫刻の顔が美しくなって来た。どんどん落としていこう。要らんものはもう分かった。(K)
彫刻の顔が美しくなって来た。どんどん落としていこう。要らんものはもう分かった。(K)
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