2019年8月1日木曜日

内なる人

ガハクの絵の中の小さな女の子を見た人が、「たしかお二人にはお子さんはいらっしゃらないんでしたよね」と聞く。その時は、心の中に住む小さく愛しい無垢なるものの存在について説明した。

夜の軒下で石を彫っていたら、ウリボウが目の前を行ったり来たりしたことがある。あれは可愛かったなあ。アトリエにやって来た狸に煮干しをやったら、毎晩来るようになって、とうとう彼女を連れて来たこともある。びっこを引いてる母猫にパンの耳を投げたら、美味しそうに食べた。やがて子猫をぞろぞろ連れてやって来た。毎晩コツコツと石を彫っていると音につられて愉快な動物たちがやって来た。

あの頃の夢のような日々はもう来ないのかと思っていたけれど、今日は野原が赤く染まって夏水仙が輝いて見えたし、暗くなったら野兎が覗きにやって来た。私がやっていることを森の中から見ている者たちがいる。

昨日と今日で胸の子供をすっかり削り落とした。もうお人形のように置かれた像ではなく、その人の内に住む人の姿を彫りたいのだ。(K)


よく見られている記事