2019年7月6日土曜日

ガハクの胸像

棚の奥から引っ張り出して、作業台の上に置いた。1週間前までは、この台の上にはレリーフが置かれていたのだ3年間も。ひとつの彫刻を仕上げていくのに、何度も彫り直せるなんて理想的じゃないかと思う。もっと象徴的に抽象を通って内と外が一致した形にしたいのだ。これじゃまだ表面的で造形的過ぎる。美はもっと勝手で自由で飛翔するものなのだ。だいたいガハクはこんなに冷たくしょぼくない。今はもっと生命に溢れている。そういうのが人間だ。再び生まれ変わらなければ本当の人間じゃないってことだ。彫刻もそう。形を超えて初めて彫刻になる。(K)


2019年7月5日金曜日

改めて「Mの家族」

展示が終わり残されていた課題に手をつけようとシーツの覆いを外した。半年以上見ていなかった150号の画面だ。予想とは違って嬉しいことに緑は綺麗だった。しかし構図に面白みがなく色にも艶がない、特に人物の描かれ方が…曖昧過ぎた。逆に、とにかくよくこんな欲の深いモチーフを描こうとしたものだと感心するくらいのものだった。今ならもう少し方策もあると思えるが、でもどこから手をつけていいか途方に暮れる感じでもある。
とりあえずトワンから描き始めてみることにした。(画)


2019年7月4日木曜日

半径20キロのスフィア

もう一つのレリーフの仕上げに取り掛かった。太陽の下のとおめいなまるい球だ。この人の口元と額には随分苦労したのになかなか気に入った顔にならなかったが、今日、やっと、やさしい歌声が響くようになった。粗野な声は消え、よく通る美しい声で呼びかけている。

人間天使はこの世に属さない。しかしその影響は20キロ先まで及ぶそうだ。声は大きさではない。美しい声に人は振り返り聞き惚れる。美しい声は最内部に残っている純真を呼び覚ます。だから一人の天使の力を見くびってはいけないのだ。小さく愛しいものの発見から本当の生は始まる。(K)


2019年7月3日水曜日

展覧会に緊張

展覧会初日に緊張?今まで高揚感や不安感はあれど緊張したことはなかった気がする。歳をとってプレッシャーに弱くなったのか、気分の高まりや自惚れの裏にある期待感が薄れたせいなのか、それとも専門画廊や美術館とは違う空間での展示に慣れないだけなのか…。そういう自分を予期していなかった。
店に着くと昨日に続いて展示は美しく見え不満は何もない。
今日はお客さん少なそうな火曜日だという店長の予言。この人とも長い付き合いの割には話をあまりして来なかったなあ。常連客は個性的な人ばかりでたまに会うには刺激的で面白いが、彼らを常時相手にしているマスターの人間性の大きさには驚くばかりだ。
空いた店内の椅子に座って外を眺めていると表を通る人が時々足を止めて外の「Kとガハク展」の看板を見つめたり、内部を覗き込んだりする。世間に何か面白そうなことを提供できそうで嬉しいじゃないか。
4時間ほどKと二人で店にいた。中島さんの曲が耳について離れない。(画)

2019年7月2日火曜日

遂に実現!!

並べ終わってマスターが淹れてくれたコーヒーを飲みながら絵の中のトワンをじっと見つめていた。この日の為に作って来たわけじゃないけれど、まるでこの日を待っていたような輝きを放っている。トワンが生きていたらこんな風には絵の中にいなかっただろうし、こんな風に眺めていることもなかったはずだ。雨が吹き込む縁側でじっと私たちの帰りを待っているトワンのことを思って気持ちがソワソワしていたかもしれない。大理石の中に彫り込んであった犬は前に飼っていた犬だったのだけれど、トワンに彫り直した。愛は記憶ではないことはハッキリとした。それが有るか無しかは、失われて初めて知ることができる。蘇る力は内側にあるのだ。内に何も宿っていなければ死んだものは居なくなるだけだもの。今実現してやっと確信した。(K)


2019年7月1日月曜日

7年ぶり

作品積み込み終了。
思えば7年前の岡山での展覧会、今度なんかよりずっと遠方でしかも三ヶ所での同時開催などよくやれたものだ。DMやチラシづくり、作品のパッキング、運送会社に発注して荷の搬出受け取り、現場での飾り付け…。二人で全部やった。そしてトワンを車に乗せての長距離ドライブと外泊。長い期間見ず知らずの土地に寝起きしてトワンには心細い思いをさせせてしまったなあ。だからもう二度とあゝいう風な展覧会なんかしないと決めたんだった。
でもトワン、今度はねママが愉快な看板書いたよ。(画)

2019年6月30日日曜日

『月下の森』

夜の9時にガハクに来てもらってレリーフの額装に取り掛かった。黒光りした額にレリーフが嵌ると引き締まったスフィアが辺りに漂う。車に二人で運び入れる前にグッと腰を低く構えて筋肉を呼び覚ました。この日のための筋トレ効果か、思ったより軽くすーっと持ち上がった。77kgの重さも下に毛布を敷けば、ライトバンの荷台の奥へと滑り込ませられる。

月に照らされたとおめいなまるい球を主題に彫って来たレリーフ『月下の森』、よくここまで来られた。明日はKとガハク展と墨で書こう。展覧会の看板だ。(K)


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