もう三日も瞳の穴をほじっている。穴が深くなればなるほど、目が鋭くなるばかりで光が乏しくなる。で、今日は思い切って穴の縁を広げた。二重のラインを入れたら虹彩のニュアンスが出て柔らかな眼差しになった。さらに眼球の側面を切り込んでみたら、目がぐっと顔の中に収まった。
夕食を食べながらガハクの目を眺めた。測量的に形を覚えるのではなく(そんなものは何の役にも立たない、命のないただの写実だ)優しい形や淡い光や煌くものを吸収する。会話の中にも入っている。印象というだけじゃなく人格というものに近い霊的なものを覚えておけば、石の前に立った時に彫り進むことができる。
ブレイクが「自然は私を阻害する」と言った。ガハクも「描こうとするものを見てはいけない」と言う。目を彫っているとそれが分かる。怖じけた意識では目は彫れないんだ。(K)
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