ガハクが子供の頃に庭に埋めて隠したブリキ箱の宝箱の中には、もうひとつ入っていたものがある。
「まだ小さかったから、将来自分が剣道に夢中になるなんて想像すらしていなかった。でも今思えば、あの頃に刷り込まれたんだね。赤胴鈴之助が大好きだったし」と、二人の剣士が刻まれた小さなレリーフをピタゴラスと並べて見せてくれた。
ピタゴラスの方は腕のいい職人が作ったような品があるが、剣士の方がずっと魅力的で見ていて愉快だ。 こういうものに惹かれるのが子供だ。子供のような純真な心を持って仕事をしたら、何をやっていても楽しいだろう。
金のことを考えて働くよりも、金のことを考えないで仕事する方がずっと面白いし、ほんとはお金だってその方が入って来る。 この事実を知っている人はほんとうに少ない。生き還った人は同じ場所には戻らないのだ。もう二度と。(K)
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