筆はきれいに洗ってあったけど、パレットがそのままなのに気がついた。拭き取る元気がもうなかったのかもしれない。「大丈夫、他にもあるから」と息絶え絶えに言ったのは昨日のこと。
今日は声も大きくなって、耳を寄せなくてもよく聞こえた。ゴホゴホと咳の音も大きくて頼もしい。吸引に頼らず自分で痰を吐き出すことも半分くらいはできるようになったそうだ。急速な回復である。でもガハクにしたら、今の方が苦しいらしい。「僕どうなるんだろ?」なんて気の弱いことを言ったりするところが、とても正常だ。痛いとか苦しいとか寂しいとか、そういう気持ちはそのまま感じて言えることが人間らしさなんだな。
毎日面会に行くと、毎日大きく前進している。今日は手のむくみがすっかり消えて、いつもの優しい形をしていた。色がまだピンクに戻っていないだけだ。足も昨日はパンパンに膨れ上がっていたのに、今日は半分くらい萎んでいた。明日はきっと元の大きさになっているだろう。リハビリで立たされたり車椅子に座らされたりしている。今日は10分。
別れ際、ドアから出る時にVサインをしたら、ベッドに半身起きた状態のガハクは右手を高く挙げてVサインを返してくれた。奇跡のような日々が続いている。この喜びを決して忘れないようにしよう。(K)
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