今朝ガハクに会いに行ったら、目がぱっちりと開いていて驚いた。昨日までの4日間ずっと昏睡状態の姿しか見ていなかったので驚いていると、先生が現れておっしゃるには、「ご自分で管を抜かれたんですよ。そして、恭子に会わせてくださいと話されました。それでそのまま様子を見ることにしたのですが、今のところ大丈夫みたいですね。このまま行きましょう。また容態が急変したら管を入れることもあるかもしれせんが、その時はお電話します」とのこと。睡眠剤が切れる頃合いを見計らってガハクの容態を見るために体を起こした時のことらしい。
話しかけても良いし、手に触ってもいいと聞いて、とても安心した。無菌状態で隔離された緊急状態から抜け出せたということだ。目が合うと枕の上で何度もうんうんと頷いて見せる。手を握ると強く握り返して来た。僕はしっかりしているからね、安心しなさいというメッセージだ。瞳を見ようとぐっと覗き込んだら ガハクは顔を横に振った。なんでだろう、、、ずっと縦に振っていたのに、、、あゝもしかしたらそんなに心配してはいけないと言っているのかもと思って、大きな声で聞いてみた。「心配しないでって言ってるの?」すると、大きく深く頷いた。
1時間以上そばにいたけれど、今日はパンを仕込んで来たからもう帰るねと言ったら、ニンマリ笑った。はっきりと笑った。この人は本当に生き返った。生還した。嬉しくて車に戻っても食べることも飲むことも出来なかった。嬉しくて空に浮かぶ白い雲にトワンと呼びかけながらハンドルを握っていた。
ガハクが300日続けて来た腕立て伏せのおかげかもしれないし、毎日焼いていたパンのせいかもしれない。掃除をしているときに花瓶を倒してしまってドライフラワーの花が散らばった。それを丁寧に拾い集めて、ガハクは紙で作った四角い皿に並べていた 。そんな優しいことをする人だから救われたのかもしれない。何が何に繋がっているのか私には分からないけれど、一人で5日暮らして分かったのは信じることは繋がるということなんだな。(K)
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