雪で潰されぬように下ろしてあったネットに潜って、支柱を立て直した。ぱんと張ったネットの中は、ビニールハウスじゃないのに何となくあったかい。パーッと明るく感じる。猪と猿避けなんだけど、何か他のものからも守られているような、そんな安心感があるんだな。
手前から、サヤエンドウ、キャベツ、ブロッコリーと並んでいる。いつの間にかずいぶん大きくなっていた。今年の春は、いつもより半月早く動き出している。ジャガイモは、すぐに植えても良さそうだ。
ガハクが戻って来るということが、日々の行動を活気付ける。今までやって来たことをまた続けても良いという許しをもらったような気がしてありがたいのだ。楽しさが違う。こんなに愉快なことをやっていたのかと、他人のことを見るような目で眺めている。ガハクもそうだと言っていたっけ。
救急車で運ばれてからずっと今朝まで、チューブを通して栄養を注入されていたガハクが、ついにチューブを外されて初めて食べたのが今日の昼ご飯だった。1時間かけてゆっくりと自分の手で口に持って行き、ぜんぶ綺麗に食べ切ったという。美味しかったそうだ。おかゆだったけれど、普通のご飯が良ければいつでも変更できるというから順調なんだな。というか、初日で完食できる人も珍しいらしい。
「病気にはなった方がいい」と今日も言っていた。生命力というのがどういうものなかの、与えられるものと失うものが見えるからだろう。また同じことを繰り返すのを止めるチャンスを与えられたということだ。二度と繰り返したくない事、二度と戻りたくない場所がある。ここに生きていて良かったねと何度もお互いの命を確認しながら前に進むんだ。(K)
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