器物的にそれなりに作られたものからは匂いは立ち昇らない。写実的にそれらしく作られたものの周りの空気は冷たく止まっている。生きたものから湧き立つ匂いが発散華になって風を起こすのだ。
手は花。生き返ったばかりのガハクの手はまだ白いけれど、両手で包んで温めたらぽーっとピンク色に染まった。毎日強く握手している。だんだん握り返す力が私を超えつつある。手がこの人の活動の中心だということだ。最初に手から回復が始まったのは、ずっと手を使って来た人だから、すぐに思い出したのだろう。
神に「風が生まれる場所をお前は知っているか」と聞かれてヨブは答えられなかったが、今の私なら、あなたの手からと言うだろう。(K)
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