2020年2月29日土曜日

文通

エレベーターを降りてすぐの場所でじっとガハクの病室の方を見つめていたら、ゆっくり出て来た。看護師に囲まれて点滴とかぶら下げるキャスター付きの棒に掴まっている。そして私に向かって大きく手を振ると、OKマークを右手で作って、「穴が塞がったよ!大丈夫だよ!」と大きな声で叫んだのだ。一気に緊張がとけた。

届けた荷物は、パジャマ一着、スケッチブック2冊、B3の鉛筆2本、練り消しゴム、三色ボールペン、セロテープ、宮沢賢治の文語詩50篇の解説本、シェーバー。中に小さな手紙を入れておいたら、ガハクが返事をくれた。 夜になって電話も来た。

「美味しいものを食べなさい。お煎餅やケーキも食べたほうがいいよ、あれは潤いだよ。いい材料を決まったやり方でやるだけじゃ出ないものがあるんだよ。きっと、それは、愛だろうね」と言う。病院食がとても美味しいのだそうだ。残らずきれいに食べているガハクは、栄養士さんとも食べ物について話したそうだ。その栄養士さんは、大病を患った後にほんとうに美味しいものが作れるようになったと話してくれたそうだ。ガハクは、帰って来たら料理の研究も始めるつもりらしい。(K)


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