2020年8月14日金曜日

虚言

いつも本当のことを言うように努めていなければ、何とでも言い逃れるし、そのうち自分の身を守るためなら嘘も平気でつけるようになる。

「60過ぎたらわたくし嘘を平気で言えるようになったのよ。苦しい場を切り抜けるためなら幾らでも嘘をつけるわ。それでいいと思っているの」と親子ほど歳が離れた年上の友の言葉とその時の顔を思い出す。独りで生きて来て最後に辿り着いた知恵とでもいうような誇らしい顔だった。若い頃からそういう逞しさをで窮地を何度も切り抜けて来た人の寂しい結論は、もう取り返しがつかない。大事なことを話す口が、そこから出てくる言葉が、もう彼女にはなかった。最後に自由について議論した時にそれがはっきりと分かった。「私の自由はあなたの自由を束縛するものなの。だから私は独りで生きて来た」と彼女が言ったところで別れた。

今世界がようやく本当の自由は人権なのだと理解し始めている。Black Lives Matter そして香港。分断されていた世界が繋がり始めている。

版画室を覗いたら、上半身裸になってビュランを動かしていた。ピカピカに光った銅版に文字がくっきり浮かび上がっていた。今夜は熱帯夜だ。窓辺の扇風機がぶんぶん回っている。(K)


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