この辺りの山のことを「何にもありませんね」と言う人と、「放っておかれていていいなあ」という人がいる。手入れがされていない山、ボサボサの草原、凸凹の山道、鉱山跡の石ゴロゴロの山道が、ふわふわの腐葉土に覆われるには一体何年かかるのだろう?人が荒らした山の修復をするのは森だ。
エデンで人に会うのは珍しい。先日遭った青年は以前にもここでガハクを見かけていたらしい。「犬を連れて、木を片付けてましたよね」と話しかけて来た。トワンが死んでからもう一年半経つのだから、彼は何度もここに来ているということになる。アウトドアの写真を撮っているのだと言うから、プロメテウスの石の傍に細工した木切れが落ちていたのは、どうもこの青年のやったことのようだと合点が行った。
自然の中に自分を重ねて写す人は痕跡を残す。透明な目を持つ人は何も残さないで、ただ認識を持ち帰る。(K)