2020年8月13日木曜日

トワンの山

今朝は7時台にガハクは散歩に出た。ここは山の天辺。アガノ村の谷を跨いだ向こうに見えるのが顔振峠だ。10年前までは、ガハクは毎夕マウンテンバイクを漕いでここらの尾根に向かっていたのだった。今はこうやって毎朝エデンを抜けてプロメテウスの石のある峠まで歩いて登り、降りてくる。同じ道の野の草や木々に個性を見つけては喜んでいる。

「セザンヌはセントビクトアール山に登ったことがあったかなあ?」とガハクが言う。毎日同じ山を描き続けた彼も、その山に登ることはなかったみたいだ。広い庭にはキャンバスがかけられたイーゼルをあちこちに置いたままにしてあって、複数の絵を時間を決めて描いて回っていたらしい。紙と違って、麻布のキャンバスにオイルの絵具であればこそ出来ることだ。

何の変哲もないセントビクトアール山がセザンヌのおかげで有名になって、今や観光スポットになっている。アガノ村のこの山がそんなことにはなりませんように。でも、昨日もガハクは山の中で若い青年二人がカメラ機材を担いでいるのに出会ったそうだ。向こうの方が驚いて、「こんなところで人に会うなんて思っていなかったので驚きました」などと言っていたそうな。誰もが自分のフィールドのように思える山なんだな、トワンの山は。(K)


よく見られている記事