掃除機を止めてほっとした瞬間、庭から「ホーホケキョ 」と美しい声が響いて来た。鶯の初鳴きだ。開け放した窓から春の風が入って来る。
壁にかけてあるガハクの木版画に目が行った。これは30年前に私が坐骨神経痛で伏せっていた頃の思い出の絵だ。あの頃の苦悩を包む椿の木と渡って行く風。ガハクはいつも版木や銅板に直接に絵を描くように彫って行くので、左右が反対になる。これだって、右手に弓を持っているように板木に描いて彫ったから、刷り上がったものは左利きになっている。でもそんなこと構やしない人なんだ。
今夜もガハクから電話が来た。夜にわざわざ担当医がやって来て、「安心して下さい。このようにやって行けば元気になりますから」と勇気づけてくれたそうだ。ガハクの筋肉が日々強く太くなりますように。(K)