2020年3月4日水曜日

たなごころ


夜にガハクから電話が入った。もう緊張することもないのでサッと受話器を取って「こんばんは」とこちらから声をかけたら、向こうからは「あゝ今日はびっくりしたよ」と唐突な言葉が出て来た。また何か見つかったのかと覚悟して次を待ったら、奇跡が起きたと言う。今日撮影したレントゲンを見て先生がその回復ぶりに驚いていたと。5日間の間に急速に右肺が修復していて、あと肋骨1本分くらいの差になっているから、もうこれだと外来で対応できるレベルだと言われたそうだ。実際ガハクが見てもその変化が明瞭に分かったという。

「先生の話を聞きながら震えが止まらなかったよ」と、興奮した様子が夜になっても続いている風なのだ。治療方針もガバッと変わって、「鈴木さんは努力する人だから、どんどんリハビリして体を強くして行きましょう。辛いでしょうけど頑張って!」と仰しゃたそうだ。

「今の僕は筋肉無しのお人形だから、寂しいだろうけれど、もうしばらくここでやらせて下さい」と、奇跡のダイナミズムに揺り動かされている気持ちをそのまま伝えて来る。はい、大丈夫です。私もやっと石が彫れるようになったところだから。

今日は掌を深くした。たなごころ、美しい音だ。もっと手首を細くした方がいいなと、少しずつ削っていたら、 ポコッと向こう側に抜けてしまった。いつの間にか薄くなっていたのだ。彫り抜いてみると、腕のシルエットが際立って綺麗だ。風が通った。(K)


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