アトリエにある作品にはさっきまで手がけていたものと、完成したもの、終わったものに分けられてある。完成したものは少なく終わったものが大半だ。彫り直したくてもスペースの関係で隅に片付けられているものが多い。 今はこれをやろう、次はこれだ。という心算でアトリエの中央にいくつか置く。
この作品もKyokoが直前まで手を加えていたものだった。でも数日前のある時、僕に言うでもなく独り言のように「これはもうできた」というのを僕は聞いた。
今になって思うと作品の完成感というのは作者にとっては常に曖昧なもので、その実感を持ち得る瞬間を持つ人はそれほど多くない。そう思う。Kyokoにしても多分そうだ。若い頃はともかくある時期からは間違いなくそうだったに違いない。
だから「これはもうできた」と言う言葉はこの作品だけでなく、彼女の作品全てを理解すること。そしてさらに彼女そのものを理解する上で大きな意味を持つ。未来の僕に与えられた大きなヒントになるのだ。
(ガハク)