この庭で朝から彫った。午後も彫った。夕方にも彫った。採石工場のベルトコンベアーの音が響く谷間の村は、彫刻家にやさしい。すぐ横を走る西武秩父線の電車のゴーッと過ぎる音も、親しみを感じた。線路の向こうを行き来する地元土建屋の資材を積んだトラックも、応援団のように思える。要するに、静か過ぎるのも困るんだな。いろんな音がしているところの方が、元気よくやれるということが分かった。
芸術という仕事は、手や体を動かすことに直結している。感覚だけじゃ根を持たない浮き草だ。触って確かめながら進んでいる。天界は場所ではない。お花畑でもない。安心して彫れる場所なら、そこが私にとっては天界だ。(K)