画室のドアを開けたら、ガハクは真っ赤な絵に向かっていた。画面がライトで反射して何を描いているのかすぐには分からなかった。人の顔だろうと思って近づいて、驚いた。真っ赤な空を馬が駆けてゆく。
「1日ずっと考えていたんだ、どうしようかと思ってさ」青が赤に塗り替えられるまで何がガハクにあったのか、、、ずいぶんダイナミックな転換だ。
朝私も一緒にパンを仕込んだ。あれからガハクは山に登ったんだ。午後に天使がやって来てピザを降らせてくれた。イタリアンクワトロなんとかピッザで、2種類のチーズがたっぷり載っている。う〜ん、どれも意識に働きかけるいい香りいい風いい味だ。いいものに触れると人は変われる。変わりたくなる。
私はと言うと、1日ずっと畑の片付けをしていた。腐った杭も、新たに打ち込んだ杭も、次々と揺さぶっては引っこ抜いて行った。横に渡した板を打ちつけた釘はとうの昔に朽ち落ちて、今は荷造りヒモで結えてある。どんどんナイフで切ってゆく。猿よけネットもハサミでジョキジョキ切っては丸めた。
すっかり更地になった荒野に昔彫った御影石のモニュメントが並ぶ。清々しい眺めだった。ここに来たばかりの頃の意識が蘇って来る。こういうことをしたかったんだ。ありがたいことに再び元気になれた、また立ち上がれた。これから二人とも生き直せるとは、奇跡だ。(K)