今朝も彫刻を運び込んだ。ガハクと二人でなら、どのくらいのものをどのようなやり方で動かせるか、だいたい分かっている。気合を入れて、ケガをせぬよう、指を挟まぬよう、慎重にそっと置いた。
大理石を彫り始めたばかりの頃のものは初々しい。細部までやり切れずに途中で放棄されてはいるが、ノミ痕が可愛らしい。この優しさを壊さずに続きを彫ろう。今なら、あの頃彫ろうとしたことが彫れるだろう。
ここは、鬼が騒ぐ荒野からやっと解放されて辿り着いた岸辺だ。 方舟の窓から柔らかな冬至開けの日差しが入ってくる。(K)