ビュランの形にもいろいろあるのだけれど、その使い方を「誰も教えてくれない」とガハクは言う。唯一参考にして来たのが、駒井哲郎の『銅版画のマチエール』という本だ。藝大で直に教わったこともあるガハクだが、先生はビュランを研ぐのが苦手だったそうで、もっぱらエッチングだった。氏の本だけを頼りに試行錯誤を繰り返しながらここまでやって来たガハクである。
先端がクルンと曲がっているビュランのテップリングツールは、どうやって使うかずっと分からなかったのだけれど、最近ガハクが、「どうも点々を打つのに使うみたいだね」と言い出した。幾つもの点を跳ねるように次々と刻んで点線を彫る道具らしい。
「ブレイクの銅版画を見ると、テップリングでやっているみたいな所があるんだよ。でも確証は無い」と、あくまで慎重だ。
机の上の奥の方に削った銅粉が溜まっている。いつ見てもこういう風に粉が向こうへ押しやられている。お正月も、病院に入っている間も、ずっと銅粉が積もったままだった。
「ときどき掃除しているよ」と言い訳も言う。そりゃそうか。確かに、いつ見ても同じ量だものね o(^ー^ )o(K)
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