2020年7月12日日曜日

園長石

この木は臭木(クサギ)と言って、葉っぱを揉むと嫌な臭いがする。でも触らなければ、涼しい木陰を作ってくれる見た目には優しい梢だ。

臭木のアーチを抜けた辺りに、石が見える。あの石は、ある日突然そこに現れた。真っ先に見つけたのがトワンで、盛んにくるくる石の周りを回って臭いを嗅いでいた。怪しい奴だと思ったらしい。山の上の岩盤から剥がれた浮石が転がり落ちて来たのだろう。ここはそんなに急ではないが、上の方は急斜面だ。ゴロゴロと一旦転がり始めたらなかなか止まらない。

どんなに安定していても、重いものはやがて落ちる。異界から落ちた者は、まだそこらの匂いに馴染んでいなくて浮き上がっている。もうあれから10年、風景に少し溶け込んで来た『園長石』、私が付けた名だ。(K)


よく見られている記事