夕飯を食べながらガハクが、
「まだ手が震えるんだよね。だいぶマシになったけど」と、ハンバーグに添えた野菜を箸で掴んで空中でしばし停止させて見せた。
「だから、まだ細い筆を持つ気にはならないんだ。しばらくは大きな筆で広いところを塗って行こうと思っている」とのこと。
この木は描き直されてずいぶん元気になった。新しく描かれるものの方がいいに決まっている。そういうことがすっかり分かっちゃったんだ。同じことを同じように正確にきっちりとやれて金が入っていればやっている気がしているのは勘違いだった。弱いところ、死にそうなところを見つけては息を吹き返してやる。そういうことをやっていると中から楽しさと喜びが湧いて来るんだ。
ガハクが使っているエキスパンダが面白そうなので、私もやるようになった。二本のバネをぐっと両腕で広げる。20回くらいがちょうどいい。そのうちバネが3本に増えるだろう。じっとして使わないでいると筋肉は毎日6%減るのだそうな。少なくて4%で、鼠算式に加速するからガハクもあっという間に32kgまで体重が落ちた。脛の骨が角材のように露わになっていたのを思い出しながら、今やっとふっくらしてきたピンク色の脚を触っている。リハビリは、自然に筋トレの方へと移行して行く。当然の流れだ。
絵の中の森が、わうわう大きな声で歌い始めた。「新しい歌を唄いなさい」と聖書に書かれてあった通りのことを今ガハクは絵でやっている。大きい筆で大きな声で愉快な歌を♪(K)
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