2020年4月29日水曜日

美を捨て善を取る人

宮沢賢治「文語詩稿 一百篇」評釈(信時哲郎著)を読んでいるガハクが、ときどき面白いところを見つけると、私に話してくれる。賢治が何度も何度も推敲して行く中で、何を捨て何を加えたかということを手がかりにして、彼の最期の姿を浮かび上がらせようとしている本なのだそうな。

誰しも自分の作品を最高のものに仕上げて後の世に残したいと思うものだろうに、賢治はそうではなかったそうだ。人の口に慣れ親しみやすく、覚えやすく語られやすい言葉に変えている。そうやって大事なことを伝えようとしている。それは詩作と言うより、まるで標語作りのようだと書いてあるそうだ。そんなことをしたら芸術の特性である個性と呼ばれる自分の痕跡を消すことになる。そんなことをわざわざ死の直前までやっている人、やれる人がいたことに驚く。

見えて来るもの、降りて来たことを引き受けて、形にする為に最期の時間を使った人たち。その最後の力のことを思うと勇気が湧いて来る。(K)


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