2020年4月21日火曜日

どんづまり

ここからもう少し行ったところにエデンの門がある。鉄製の頑丈な門にはいつも真鍮の鍵がかかっている。門の脇から小道が上までずっと続いている。動物たちとガハクとトワンが作った踏み跡だ。

林道は去年の豪雨ですっかり削られて殺伐たる風景になってしまって、おかげで打ち捨てられた車への嫌悪もすっかり消えてしまった。割れたのか破られたのか、窓ガラスも今はすっかり無くなって、幾度もの風雨に中も外も洗われて辺りに馴染んでいる。前より綺麗になった気がするくらいだ。

この車に乗っていた人を知っている。アトリエの近所にこの車がときどき停まっているのを見かけたからだ。引っ詰めの髪に化粧っ気なしの女性だった。生協の共同購入をしているようだったけれど。その車が突然裏山の林道に放置され、しかもナンバーは外されていて驚いた。それからは彼女を見かけなくなった。

もう少し行けばエデンなのに、人はいつもここでゴミを捨て、唾を吐き掛け、引き返す。(K)


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