今夜はね、誰にも見てもらえないし売れるわけでもないし喜んでくれるわけじゃないのにこんなことしていて何になるんだろうと思ってしまったの、とガハクに話したら、「それは病気より大変なことだよ。病気は治せばいいけれどそっちの問題は簡単じゃない。どうするの?」と風邪でゴホゴホ咳をしながら見つめられた。
雪で冷え込んだ夜のアトリエで彫り始めたらそう思ったのだ。そしてすぐに眠気が来た。椅子に座ったまま柱に寄りかかって目を閉じたら寝てしまった。2、30分。目が覚めたら、もうさっきの悪霊はいなくなっていた。尻尾から彫り始めた。
今は、嘘の形を削り落とすだけでいい。本当の形が彫れないから嘘で誤魔化すのだ。洒落た感じ、素敵なニュアンス、最短なやり方、どれも嘘の入り口の置物だ。よく知っている愛しいあの生きている姿を彫りたい。(K)
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