2019年3月14日木曜日

記憶の物質主義

愛は記憶なのだろうか?

交通事故で記憶喪失になった友がいた。彼は結婚したばかりの妻のことを思い出せなかった。今朝食事を摂ったかどうかも思い出せない。好きで一緒になったのだから、また好きになればいいじゃないのと言ったのだけれど、人と人の繋がりはそんなに単純なものじゃないらしい。その後子供ができ成人するところまで育てたところで離婚したと、ずっと後で知らされた。

トワンが死んで4ヶ月が経ったが、ますます愛おしくなる。これは記憶だろうか?

 今日は久しぶりにトワンの姿をありありと思い浮かべながら彫った。しなやかな脚、触ると猫のように柔らかな体、愛しいものがいなくなるはずはないのだ。記憶に頼らなければ性質にまで刻み付けられたものとなっていつでも自在に彫れることが分かった。

名もなくなって何処とも知れないところでまたばったり出会うその瞬間、愛し合う者は一挙に記憶が呼び戻され、その人が誰であるか分かるのだそうな。だとしたら、すでにあの世もこの世も同じじゃないの。(K)



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