2019年2月20日水曜日

天界の花

ガハクの画室の壁には天井までとどくほどの大きな樹木の幹が立てかけてあって、その枝の一つにトワンの首輪がかけてある。ちょっと壁に寄りかかった弾みで木に触れたのか、それとも壁の振動で枝が揺れたのか、トワンの首輪のベルがチリンと小さく鳴ったのだそうだ。その音を聞いてガハクは深い寂寥感に囚われてしまった。
「今3ヶ月経ったわけだけど、この感情はずっと続くんだろうか。それとも何か違ったものになるのだろうか」そういう話をしている時のガハクの目は赤くなる。可哀想になった。

その気持ちを引きずったままアトリエに着いて石を眺めた。花を磨いてみようと思い立って砥石を手に取った。どんどん進む。唇と鼻の形をだいぶ直した。目もはっきりさせた。

トワンは天使だと思えていたのだが、愛そのものが人の姿をしているのだ。だから、トワンが美しい青年の姿をして現れても不思議じゃない。(K)


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