2019年2月21日木曜日

説明

最初期の銅版画にはその技法が発見された時の喜びが満ちている、とK先生が書いていた。
それは太古の昔、洞窟に描かれた動物たちの絵にも感じることができる。あの躍動感はたぶん宗教感情から出ているだけではないと思える。
技法が発見された時代の喜び。
油絵だってそうだ。その技法が発見された15世紀のヴァンアイク兄弟の場合、対象の細部に至るまでの描写、要するに形や色や材質の説明だけで絵ができているとも言える。
説明するだけでよかったのだ。
「説明」ーー今の絵画に失われた要素だ。思えば時代が降るに従いものの説明よりも作者の意図や表現の仕方こそが重要になる。むしろものを描いて「説明」するということは表現の誠実さを欠くのだ。
説明と表現の次元の違い。と同時に品性の次元の違い。説明だけで充実していた時代、そこに喜びがあった時代、そしてその品性も今では失われた。
できるならばもう一度「説明」だけで絵が成り立つような描き方を見つけたい。(画)


よく見られている記事