町田康の 『告白』、わたしが先に読み始めたのに、とうとうガハクに追い越され、今夜は最終章を静かに笑いもせずに読んでいる。あんなに途中でしばしばクククッと含み笑いや苦笑いをしていたのにだ。熊太郎が可哀想の一心だろう。あ、今鼻をすすった。
途中でやっぱり私は読めなくなった。ガハクの解説を聞いているくらいの距離がちょうどいい。
「読んでいると頭が澄んでくるね。鋭くなる」と言う。正義があると思っていたのに、ちっとも世界はそんな風には動いていなかったことを知る熊太郎。今日は彼と同じ目に合わされた。家庭内のDVや利害や狡猾が他人に向けられる。忌まわしく汚らしい言葉を当然のように語る人たちにうんざりしながら、憐憫を感じつつ労働に勤しんだ。黙って即座に動ける体力と気力は普段から鍛えてある。
ガハクは、敵に対して仁王立ちして正面から見据える。熊太郎のことを解る人は少ない。事件が明るみに出てニュースペーパーを騒がせるようになると乗っかってくる連中はとても多い。それが世間。うんざりだ。やめたくなる。(K)