今日からガハクはアトリエの引っ越し作業から解放されて、画家に戻った。小糠雨と霧に包まれた山道を登りながら懐かしく思うのは、生還して季節が一年巡ったという感慨があるからだろう。
記録を見たら、退院後20日経ってやっと散歩に出ている。すぐには歩けなかったし、立ち上がることだってやっとだった。それが1日1日ゆっくりだが、ダイナミックに回復して行くのを見ているのは感動的だった。
トワンが雪の日に猪を深追いして帰って来なくなったことがある。5日後、山の向こうの村で発見して無事に連れ帰ったのも、「3月14日だったよ!」とガハクがノートに書き込んだ日記を見て、偶然の一致に少し興奮して言う。
今日は一日中雨が降って、びしょびしょの水たまりだらけの庭を歩きながら思った。この3ヶ月ほとんど雨も降らず、雪も積もらず、晴れが続いたなあと、とても偶然とは思えないなあと、ありがたく思った。もうこれは僥倖としか思えない。
蝋燭工場だった建物が、子供に絵を教える教室になり、今アトリエに生まれ変わろうとしている。一つ一つ道具を置いて使い易くしている。片付けも面白い仕事だ。(K)