横長の絵だと思っていたら、底に向かってまっすぐ潜っていく男を描いたものだった。ガハク自身がそれを忘れていて、イーゼルを二つ繋ぎ合わせて、絵をそこに載せるまで気が付かなかったと言う。そのくらい長い間放って置かれていた。
「今だったら果敢に攻めて行けるような気がする」と、作り損なった横長のイーゼルにキャンバスを立てかけて眺めている。縦が180cmくらいあるから、壁に寄りかけて描けばいい。
昨夜観たタルコフスキーの映画『僕の村は戦場だった』のイントロに、少年が母親といっしょに井戸を覗き込んでいるシーンがある。暗く深い井戸の底には、昼間でも星が見えると聞かされる。少年は星を掴む為に暗い井戸に降りていくという幻想がそれに続く。
その意味はずっと最後まで隠されたままなのだけれど、今夜ガハクの絵の中の男が縦にまっすぐ、しかも深い水底に向かって泳いでいると知って、「あなたはずっと前からタルコフスキーと繋がっていたのね」と言ってしまった。(K)