2021年2月3日水曜日

人が去る時

闇が谷を覆い始めた。山の上だけが太陽に照らされている。あの家の主が亡くなったことを後で知ることになる少女は、道を急いでいる。辺りの様子がいつもと違うからだ。彼女はもう何か不吉なものを感じ取っていたんだ。

ガハクの絵が変わっていく。一本一本の樹木を丁寧に描き変えている。光と闇が騒ぎ立つ森。雲が怪しく揺れ動く。今何が起きているのか?何もない平和な時があるとすれば、せっせと夢中で働いている時だけだ。

画家が筆を取ってパレットの上の絵の具を拾ってキャンバスの上に置くと、さーっと霊気が変わる。今夜は少女がすっかり削り取られていた。描き直すことにしたそうだ。(K)



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