ウィリアム・ブレイクの詩『無垢の予兆』の中にどうしても分からない一節があった。情熱について語られているところだ。
To be in a passion you good may do,
But no good if a passion is in you.
これを何かの暗喩として解こうとするから分からなくなるのだ。ずっと分からないまま頭の隅に置いてあって、ときどき考えていたのだけれど、やっと分かった!
さっきガハクの画室を覗いたら、夕暮れの薄暗くなった森を描いていた。火の色が最近とても鮮やかになって来たので、「火を描くのが上手になったね」と言ったくらいだ。そして、気が付いた。火が心の中に燃え始めると自分では消しようがない。その根拠さえ掴めないままどんどん火勢は強くなるばかりだ。そういう自分の内側が燃え始めることの断末をブレイクは書いているのだ。つまり、そこには鬼がいるということだ。
タルコフスキーの『サクリファイス』の中の火事もそうだった。『鏡』の中に出てくる火事のシーンも内なる火だ。火燃しするのが好きな男に気をつけろ。(K)