晦日の夜に吹いた風に吹き飛ばされた杉の枝が、山道に敷き詰められている。相当強かったようで、茶色の枝だけじゃなく緑の枝も混じっている。
ガハクの絵にも風が描いてある。どこかに吸い上げられそうな風だ。風の色はどうやって描くのだろう。上手いなあ。よく感じて観察しているからだなあ。犬がいる。ボールが転がっている。この家なら風が吹いても大丈夫だ。
タルコフスキーも風を撮るのが上手かった。じっと待つのだろうか。大きく広く吹き抜ける風に波立つ草を克明に拾っている。『鏡』でも『サクリファイス』でも『ストーカー』でもそんな風が吹いていた。あれはこの世と地続きの霊界の風景だ。(K)