昨日のことだ。ガハクが山の中を歩いていて、「黒を練ってみよう」と思い立ったという。そこだけ聞いたら、別に特別なことだとは思えなかったのだけど、その後に次々と湧き起こってくる絵の中の出来事を聞いていたら、黒の存在は大きいのだなあと納得した。
そもそも黒の顔料を真っ白の大理石板の上に広げ、オイルを少しずつ垂らしながら大理石のすり棒で練って行くこと自体が、横で見ていても気持ち良くない景色なんだ。実際にガハクは滅多に黒は練らない。それに、なるべく黒を使わずに描こうともして来た。この絵の黒猫だって黒は使ってないのだそうだ。
でもずっと若い頃は好んで使っていたという。グレートーンが綺麗な絵が彼の実家の鴨居にかけてあったのを思い出した。高校生の頃の絵だろう。
練り上げたばかりの黒を森のあちこちに使ってみたら、ぐいぐい絵が変わって行く。それが面白くて、「やっと良くなったよ」と喜んでいる。
山でふと思いついたことが大きな飛躍を生んだと言う話。
どこに何が転がっている分からんねえ〜(K)