夜寝る前にガハクはギターを弾くようになった。私も夜にバイオリンの練習をする。同じ曲を弾いているので、だんだん上手くなって来たら合奏してみたりするけど、ほとんどそれぞれ独りで弾いている。
「独りでやれないものは、皆んなともやれないよ」とガハクが言う。絵だって独りで描けない人にはその楽しさは分からないと言う。楽器もそうだな。下手でも独りで弾いて楽しいという気持ちが湧いてくればこそ、とつとつと音を並べて愉快な気持ちにもなるんだ。芸術は孤独な場所から始まるようだ。熱意は一人の中に生まれて、やがて他の人の熱意や共感に繋がっていく。
妻の肖像がすっかり描き変えられていた。音楽が鳴っているみたいな空間だ。(K)